STRUCT REPORT
採用コラム

【イベントレポート】増渕 知行(ジャンプ株式会社 代表取締役)による「採用戦略・採用競合分析に必要なポイントと手順」

2021年6月1日、有識者を集めたオンラインイベント「経営×採用STRUCT サミット2021」を開催いたしました。

コロナ禍により、多くの企業経営は方針転換の真っただ中にあります。経営方針や事業戦略の変化にともない、採用戦略・人事戦略も描きなおす必要がある。そんな人事・経営者のみなさまに、23新卒採用においても、トレンドをキャッチしながら具体的施策のヒントを得ていただける機会を目指したイベントです。

本記事では、弊社代表・増渕による『採用競合分析ワークショップ』の様子をご紹介いたします。
採用は、最後の最後まで他社と比較されるマーケット。競争優位を確立するには、ライバルとなる採用競合の「動き」「魅力」そして「評判」を理解・分析し、対策を検討することが必須です。
このプログラムでは、ワークショップ形式をとり、弊社代表・増渕が、採用コンサルティングにおいて実践している競合分析メソッドをレクチャーいたします。

また、実際のワークショップで使用した「採用競合分析シート」のダウンロード申請もできますので、ご活用いただければと思います。

2008年、ジャンプ株式会社を設立。20年以上の採用コンサル経験をもとに、事業を伸ばす採用戦略フレームワーク「STRUCT」を開発。採用戦略オープン講座「STRUCT ACADEMY」を立ち上げ、主宰として指導にあたる。

登壇者:増渕知行
ジャンプ株式会社 代表取締役

1.はじめに

増渕: まずは、簡単に自己紹介をさせていただきます。
1996年から丸25年、サラリーマン時代も独立してからもずっと、採用支援の仕事をしております。ですので、採用のことなら大抵のことはお応えできる自信があります。新卒採用や中途採用、大企業でもベンチャー企業でも、採用のことなら何でもご相談いただけましたら、何かしら価値がお返しできるかなと思います。

この25年間、採用のお手伝いをする中で、一番大切にしてきたことがあります。
それは、3Cです。マーケティング用語なので、ご存知の方も多いと思いますが、Company、(一般的にはcustomerですが)採用3Cで言うとCandidate(候補者のニーズ)、Competitor(競合のアピール要素)です。

「自社の魅力ってなんだろう」「候補者のニーズ・候補者にささる魅力ってなんだろう」「競合はどんなことを打ち出しているのだろう・競合と差別化するにはどうしたら良いだろう」と、3Cの目線でクライアント企業を見つめ、情報収集・分析をして、「この会社が採用競争に勝つにはどうしたら良いだろう」というのを徹底的に1社1社考えて、ご提案し実現してきました。
なので、私にとって「採用×3C」は、自分自身の核になる掛け算です。

2.相対比較で考える

次に、私が常に意識していることですが、「相対比較で考える」ということです。

皆さんもよくお聞きになるかと思います。「うちの会社ってすごい自由なんです!勤務時間もフレキシブルで、上下の関係もフランクで…」とか、「うちの会社って成長できる環境なんです!資格も取れるしスキルアップもできて、研修制度も充実していて…」とか、採用活動についても「わが社は早期から採用活動をしています!夏のインターンシップから学生との接点をつくっています」とかですね。

ですが、これが本当にそうなのか?と言えば何とも言えないわけです。
なぜなら、みなさんの会社よりも「もっと自由な会社」があるかもしれませんし、ここ数年で働き方の自由度も高まっているので、過去に「自由だ」と言いきれた会社が、実は意外と普通になっていたりもします。

「成長できる環境」これもよくありますが、「もっと成長できる会社」も意外とあったりするわけです。
大企業で得られる成長と、ベンチャー企業で得られる成長は、質も違います。「裁量権を持って成長できる」という意味であれば、どうしてもベンチャー企業の方が優位になります。なので、このあたりも「相対比較」で考えなくてはいけないわけです。

「早期から採用活動をしている」というのも、昨今の採用マーケットの自由化が加速したことで、大学1~2年生からアプローチする会社が少しずつですが増えています。これは数年後には、また変わっている可能性もあります。マーケットの変化も常に「相対的に」捉える必要があります。

ライバルとの関係において優位に立ち、競争戦略で勝つためには、ライバルを知り尽くさなければいけない。相対比較して考えないことには、その作戦が練れないのです。

皆さんの会社にも必ず「採用のライバル」がいるはずです。では、そのライバル企業についてどこまで理解をしているか、どこまで自社と相対比較をしていますでしょうか。必要なのはわかっているけれど、なかなかできていない…という状況もあるかと思います。
今日は、その方法を少しでも理解していただけるといいなと思い、ワークショップを企画しました。

相対比較をする上での観点は2つあります。
一つは「ライバルの魅力」です。採用上のライバルは、どんな魅力を訴求しているのだろうか。自社のターゲットから見ると、他社はどう見えていて、何がこの会社の魅力に感じるだろうか、ということです。

裏返すと弱点も知っておいた方が良いわけです。採用上のライバルはこんな弱点があるから、逆に自社のこんなところを訴求すると相対優位に立てるのではないか、という観点もあります。

もう一つは、「ライバルの採用活動」です。いつからどんな動きをして、どんなプログラムを企画しているのか、インターンシップではどのようなことを実施しているのか、説明会や面接はオンラインかオフラインか、などです。採用活動についても理解をしておくことで、対策を練ることができます。

「ライバルの魅力」「ライバルの活動」を理解した上で、作戦を練るのが重要になってきます。

本日は、「ノウハウ」という意味で「魅力」に絞って、「ライバル企業の魅力を分析するにはどうしたらよいか」を9つの観点から分析・整理する方法をお伝えしていきます。
ワークショップは、以下の順序で進めていきます。

3.増渕によるデモンストレーション

このパートでは、ご参加者の中から、「うちの会社の採用上の競合、〇〇会社について調べてほしい」と、リクエストをいただきました。
本記事では、実際に競合分析をする際に必要な3つのポイントについて、まとめています。

まず、競合分析に必要な3つのポイントは、下記の通りです。

1.競合の定義
2.情報の収集
3.情報の整理

それぞれ、簡単に説明します。

【競合の定義】
◎実際のバッティング先
→内定辞退先企業

◎ベンチマークしたい企業
→ここに勝ちたい!採用ブランドでこの会社に勝ちたい!

◎こういうところも受ける学生に出会いたい
→異業種を希望する学生など

◎ここにいるような転職者に出会いたい
→転職者の在籍企業

【情報の収集】
◎自社サイト、コーポレートサイト
→その企業の採用ページ(打ち出したい魅力を自由に打ち出している)

◎ナビサイトなどの広告
→PRポイントがコンパクトにまとまっていて効率よく情報収集できる

◎オープンワークなどのクチコミサイト(自社と比較する)
→スコア化されていて違いが明確にわかる

【情報の整理】
以下、9つの観点で整理します。
企業姿勢/事業・商品/経営基盤/仕事特性/成長・キャリア/報酬・待遇/人事施策/人的資産/組織風土

このような情報から、競合企業はどのような魅力を訴求しているのだろうか、を理解すると競争戦略の中で戦いやすくなります。

その上で、「採用競合分析フォーム」を使い、上記9つのカテゴリーごとに5個ずつ、計45個のファクターにつき、それぞれプロットをしていきます。
(手順:まずはターゲットに刺さりそうなポイント全てに〇→次に、より特徴が表れている上位5個に◎をつける)
※採用競合分析フォームは、本記事の最後よりダウンロード申請ができますので、ぜひご活用ください。

4.参加者による個人ワーク

このパートでは、個人で調べたい採用競合企業を特定し、実際に各種サイトからの「情報収集」と「採用競合分析フォーム」による情報整理を、前述の手順で進めていただきました。

【参加者からの感想】
●採用競合企業の採用ページを見て、「自社でもこんなメッセージを発していきたいな」「こういう風になりたいな」という目標が定まった。

●自社の採用チームに若いメンバーも増えたので、このワークを取り入れて他社への意識付け・育成ができたらいいなと感じた。

●競合分析をしたことで、自社についても候補者へ訴求する点を分析していかなければならないと感じた。

5.まとめ

競合を知ると、「競合は言いにくいけど、うちではこんなことが言えるよね」ということが見出せます。
これは「差別化」になるメッセージです。加えて、ターゲットに刺さるメッセージが必要です。

新卒採用で言えば「採用したい学生って何を重視するのか」と、自社の社員が実感している魅力の合致ポイント、これが「共感の接点」になるわけです。
自社の社員が実感しているけれども、競合が弱いまたは、言いにくいもの、これが「差別化」になります。

ワンキャリア・寺口さんのプログラムでもお伝えした通り、情報の透明化が進む中で、良くも悪くもごまかしのきかない採用マーケットになっています。
ある調査では、入社して1ヶ月ですでに転職を考えている新入社員が4割ほど出てきている、という21卒のデータもあります。
やはり、オンライン化でのミスマッチも増えてきているところがあるので、「自社らしく」つまり、自社の社員が実感している魅力の中からターゲットにささるものを選択し、その中で競合と差別化できる訴求をする、3Cの観点でとらえる、ということが重要になるわけです。

「自社らしく」「ターゲットに刺さり」「競合が言いにくい」ことは何かを見出し、自覚をすることが大切です。
自覚をするのは採用担当だけではなく、採用チーム全員が自覚をする、採用に携わる面接官やリクルーターも自覚をする、ということが重要です。

採用ブランドは候補者の体験によってもたらされます。
候補者が採用プロセス・選考活動でどんな体験をしたのかが、学生にとっての印象・ブランドになるため、そこに登場するプレイヤーは、人事だけではなく現場社員や最終面接をする役員・社長さんも含まれます。

選考の前半で良いコミュニケーションをして惹きつけたのに、終盤の高圧的な役員面接・社長面接で志望度を下げてしまう、という話もよくあります。
そのようなことがないように、「自社ならではの魅力」を自社の採用に関わる全員が自覚をして、一貫性も持って訴求し続けることで、ターゲットに「ミスマッチのない魅力」が伝わります。

ワークショップは競合分析がメインでしたが、「自社らしさ」って何だろう、「ターゲットのニーズ」って何だろう、そこから「自社らしく」「ターゲットに刺さり」「競合が言いにくい」魅力を見出して、自覚をしましょう。 そして、一貫性を持って、連動性を持って訴求し続けましょう、というのが普遍的で汎用的なセオリーです。
「うちの会社ではどうすればいいの?」ということにつきましては、ぜひ個別にご相談を頂ければと思います。

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