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採用コラム

採用マーケティングを成功させる4つのポイントと、実践に役立つ5つのステップを解説!

リクルートワークス研究所の『ワークス大卒求人倍率調査(2024年卒)』によると、2024年卒の大卒求人倍率は1.71倍。2023年卒の1.58倍から0.13ポイント上昇しました(図表1)。この数字からもわかるように、企業の新卒採用意欲は回復傾向にあり、各社が優秀な人材を奪い合う構造は今後ますます加速すると予想されます。

出典:ワークス大卒求人倍率調査(2024年卒)

企業間の採用競争が激化する中で、「いかに自社を差別化し訴求力を高められるか」を課題に感じている企業も多いのではないでしょうか。そこで注目されているのが「採用マーケティング」の考え方。応募者のニーズや価値観に合ったメッセージやコンテンツを提供することで企業との関係性を高め、志望度を向上させるための手法です。
本記事では、これから採用マーケティングを取り入れようと検討されている方のために、その概要や成功に向けたポイント、当社のコンサルティング成功事例をご紹介します。

記事の最後には、ダウンロード資料「母集団形成におけるチャネル選定の考え方とポイント」をご用意しております。「採用チャネルが多すぎて選べない」「どの媒体に掲載すべきかわからない」というお悩みと抱えた採用担当者向けに、採用戦略における母集団経営の方法についてまとめていますので、ダウンロード申請の上、お役立ていただけましたら幸いです。

■採用マーケティングとは?

採用マーケティングとは、採用活動にマーケティングのフレームワークを取り入れた考え方です。
一般的にマーケティングは、ターゲットとなる顧客のニーズを分析・理解したうえで、自社の製品やサービスが売れる仕組みを作り出すことを目的としています。

採用におけるマーケティングでは、ターゲットを応募者と捉えます。採用活動においては、応募者が企業を認知し、興味や関心を持ち、応募するといったプロセスがありますが、採用マーケティングでは各プロセスにおいて応募者のニーズを探り、最適なコミュニケーション施策を展開することで、採用までのフローを最適化していけるのです。


■採用マーケティングと採用ブランディングの違い

採用マーケティングと共に昨今注目を集めているのが「採用ブランディング」です。
採用ブランディングとは、採用したいターゲット人材のニーズに合ったメッセージを的確に発信し、自社のイメージを構築するためのプロセスを意味します。
つまり採用ブランディングは採用マーケティングの一部であり、認知や興味・関心といった採用マーケティングの上流プロセスで効果を発揮する施策と言えるでしょう。


■採用マーケティングのメリット

ここでは、採用マーケティングを取り入れることで期待できる3つのメリットについてご紹介します。

メリット① 応募者の質や数を向上させる

自社のビジョンやミッション、社風や働き方、キャリアパスや評価制度など、ターゲット人材が重視するポイントを事前に伝えることで、自社に対する興味や関心、さらには志望度を高められます。その結果、自社が求めるイメージにより近い応募者を数多く集められるでしょう。

メリット② 採用にかかるコストや時間を最適化できる

自社が求める人材を明確にし、効率的にアプローチする施策を用意することで、不要な求人広告やエージェント利用にかかる費用を削減できます。また、採用マーケティングの仕組みが機能し始めれば、応募者の探索や選考にかかる時間の短縮も期待できます。

メリット③ 採用市場での競争力を高める

自社に対する応募者の満足度や愛着を高めることで、採用後の離職率を低減させる可能性が高まります。入社した応募者による口コミや紹介によって、新たな応募者の獲得も期待できるでしょう。


■採用マーケティングが重要視されるようになった理由

さまざまな採用手法がある中、採用マーケティングの注目度が高まっているのには以下3つの理由があります。

労働人口の減少や働き方の多様化などの「社会的要因」

労働力人口の減少に伴い、自社が求める優秀な人材を採用することが難しくなっています。そのため、自社の業界に目を向けていない学生や、まだ実際の求職活動に至っていない転職潜在層へもアプローチし、採用候補者のマスを拡大することが求められているのです。
採用マーケティングのようなターゲット人材に刺さるメッセージを広く発信できるPull型の手法は、今の時代に合った効率の良いやり方と言えるでしょう。

②応募者のニーズや価値観の多様化などの「個人的要因」

人材の流動性が高まり、自己実現や成長、柔軟な働き方など求職者が企業に求める価値観も多様化しています。
自社のターゲットに合ったメッセージやコンテンツを提供していくためには、採用マーケティングを通じて人材のニーズや価値観を明確にしておくことが重要です。

新卒採用の早期・長期化

学生にとって売り手市場が続く中、各企業は優秀な学生を1人でも多く獲得しようとしています。その結果、新卒採用のスタートが早まり、期間も長期化。長いスパンで学生とつながり、自社への興味や関心、信頼性を高めていく必要があるのです。そのためにも、どのようなメッセージを、いつ、どこで発信するのかを戦略的に展開し、学生との関係性を維持する手法が求められています。


■採用マーケティングの成功事例

企業が抱える課題に対して適切な採用マーケティングを実施しなければ、改善や解決は期待できません。
ここでは、当社がお客様と一緒に採用マーケティングに取り組み、成果を上げた実際の事例についてご紹介します。

インターネット総合広告企業さまの成功事例

採用における課題】
新卒採用において、エントリー数は集まるものの、ターゲットとなる学生が集まらず、内定承諾率も伸び悩んでいることが課題でした。また、グループ会社複数社で構成されているため、各社との意思統一や採用基準、選考の評価観点にも違いが見受けられていました。

【施策】
・ターゲット学生に響く「採用コンセプト」の再設計
・採用コンセプトやターゲット人材を社内で共有し、採用に関わる社員全員の意識を統一
・採用コンセプトをベースに、採用パンフレット・ウェブ・説明会用映像、説明会企画に至るまで一貫性と連動性をもったプロモーションを展開

・自社への惹きつけ力強化を目的とした「コアリクルーター制度」の構築

【成果】
当社が採用マーケティングのご支援をした最初の年に、学生のエントリー数は前年比149%、企業説明会への参加者は前年比145%を達成しました。また、採用コンセプトに共感した学生からの応募も増え、ターゲット人材の母集団を形成することにも成功しています。その結果、第一志望としてエントリーする学生が増加し、内定辞退率の改善も達成できました。

関連ページ:事例紹介|GMOアドパートナーズ株式会社さま

その他、当社のコンサルティング事例紹介は、以下よりご覧いただけます。


■採用マーケティングで知っておきたい4つのポイント

実際に採用マーケティングを取り入れるときには、何をすれば良いのでしょうか。ここでは、採用マーケティングを成功させるために必要な4つのポイントを紹介します。

ポイント1:自社の魅力を明確にする

まずは自社について分析し、他社に勝る、自社独自の働く魅力について明確にすることから始めましょう。
求職者に対して何を伝えるべきかが明確になれば、自社の価値も伝わりやすくなります。

「企業理念・ビジョン」「商品や事業内容」「競合優位性や将来性」「経営基盤の安定性」「福利厚生・制度の充実」「社風や社員の人柄」など、自社の魅力はさまざまな切り口から考えることができます。ただし、他社にはない自社独自の魅力は、社内にいると意外に見えづらいものです。当社では、「魅力がうまく言語化できない」、「客観的な指標が欲しい」といった場合に、働く魅力を明確化して分析できるマーケティングツール「STRUCT FINDER」をご提供しております。
ご興味がございましたら、以下のページも併せてご覧ください。

関連ページ:採用マーケティングツール「STRUCT FINDER」

ポイント2:採用テーマと採用ターゲットを設定する

人材を採用することは、企業成長や組織強化という目的を達成するための手段に過ぎません。「自社が将来どうありたいのか」について経営方針から考え、目指す事業戦略を実現するためにどんな組織が理想的かを定義することで、自ずと採用ターゲット像も見えてくるでしょう。

組織の理想像が明らかになったら、現在の組織との間にあるギャップを洗い出してみてください。これらの差異から、自社らしさや企業のDNAといった「不変の要素」と、組織体制や必要な人材といった「不足の要素」を整理し、これらの要素をもとに、その年の採用活動で注力すること、すなわち採用テーマを設定していきます。次に、足りない部分を埋めるための採用ターゲットを設定しましょう。

<採用テーマ設定のステップ>
1. 将来目指す事業に紐づいた「理想の組織」を定義する。
2. 現在の組織と理想の組織の間のギャップから、不変の要素と不足の要素を整理する。
3. 不足の要素から採用テーマを設定する。
4. 採用ターゲットを定め、社内で共通認識化する。

「自社として狙っていきたいけれど、振り向かせるのが難しい層」を当社では「片思い層」と呼んでいます。この片思い層の入社意向を高め、自社との両思いに移行させるための手段が採用マーケティングなのです。

ポイント3:採用プロセスの可視化と採用チャネル選定

採用テーマと採用ターゲットが設定できたら、採用ターゲットが自社を認知してから入社するまでのプロセスを洗い出していきます。一般的には「認知」「興味・関心」「応募・選考」「内定承諾」「入社」といったプロセスがありますが、各プロセスにおけるコミュニケーション内容を設計し、それぞれで重視すべき指標となるKPIを設定して、効果測定・改善できるようにしていきましょう。

<KPIの設定例>

プロセスが可視化できたら、ターゲット人材と出会うための手段である「採用チャネル」を選定します。
テクノロジーの進化によって、「出会う手段の多様化・複雑化」が進展し、採用チャネルを最適に設計する難易度も年々上がっています。それぞれの採用ターゲットに合わせて、どんな手段がリーチしやすいのかを細かく検討していきましょう。

<新卒における採用チャネル例>
これまでの新卒採用では、リクナビやマイナビに代表される「大手ナビサイト(および大手合同説明会)」がメインのチャネルでした。現在もその風潮は変わりませんが、大手ナビサイト「しか使わない」学生は減少しています。それ以外に学生がどんなチャネルを利用しているのかを体系的に整理したのが以下の表です。

自社にどんなチャネルが適しているかは、採用ターゲットや採用活動時期、利用チャネルのPDCAなど多くの要素から考えていく必要があります。

ポイント4:効果測定と改善

採用のプロセスやチャネルごとにKPIを設定したら、その達成状況を継続的にウォッチしていく必要があります。
KPIに影響を与える要素についてデータを収集し、ターゲット層が仮説通りのプロセスを踏んでいるのか、選定したチャネルは適切か、発信するメッセージは刺さっているのかなどを評価できれば、施策の改善につなげることができます。採用チャネルを選定するときの観点については、下記を参考にしてみましょう。

<採用チャネル選定の観点>
①人材の質 (リーチできる人材の質的評価)
②人材の量 (リーチできる人材の量的評価)
③集客実績 (過去活用時のターゲット集客実績)
④工数 (活用にあたってかかる工数)
⑤費用 (活用にあたってかかる費用)

採用チャネルの評価と比較検討により、「強化するもの」「やめるもの」「新たに加えるもの」が見えてくるはずです。
地道なPDCAの質と量を向上させることが、最適な採用チャネル設計につながります。


■採用マーケティングの実践に役立つ5つのステップ

採用マーケティングの実践には、5つのステップがあります。
ここでは、採用マーケティングについてより具体的にイメージできるよう、架空の企業を例に5つのステップをご説明します。

<架空の企業>
楽器・音響機器メーカー

<架空の企業が抱える新卒採用の採用課題>
・業界知名度、自社への認知度がともに低い
・楽器や音響機器に興味がある学生は多いが、自社製品への関心が薄い
・採用活動がナビサイトや合同説明会に偏っており、効果的なアプローチができていない

ステップ1:自社分析

自社理解を深めるため社員や経営陣に対してインタビューを実施。以下のポイントが明らかになりました。

【強み】
・国内外に高い技術力と品質を誇る製品を提供している
・楽器や音響機器に関する幅広い知識やスキルが身につく
・楽器や音響機器に情熱を持つ社員が多く、仕事にやりがいを感じている

【事業成長/組織像】
・海外販路拡大に向けたグローバル人材の確保が急務
・高い技術力と品質を武器に、プロ向け商品カテゴリーの拡充
・楽器のデジタル化に伴う新製品の開発

【採用したい人材像】
・楽器や音響機器に興味や関心があり、自社製品にも関心を持ってくれる人
・技術力や品質にこだわり、自ら学び成長していく意欲のある人
・社内外とコミュニケーションを取りながら、チームで協力して仕事に取り組める人

ステップ2:ペルソナ設定

採用したい人物像をより明確にするため、以下の項目をもとにペルソナを設定しました。

・基本情報(年齢・性別・学歴・専攻・趣味・特技など)
・楽器や音響機器に対する興味・関心・知識
・就職活動に対する意識・目的・ニーズ
・自分の将来像・キャリアプラン
・自分に合った企業像・職種像
・自分の強み・弱み・価値観

<設定したペルソナ>
田中太郎(仮名)

22歳男性。文系大学の4年生で音楽学を専攻している。趣味はギターと作曲。高校時代からバンド活動をしており、特に楽器や音響機器にこだわりがある。
就職活動では、自分の好きな楽器や音響機器に関わる仕事がしたいと考えており、業界内で有名な企業やブランドに惹かれる傾向がある。将来的には、自分でオリジナルの楽器や音響機器を開発したり、音楽プロデューサーとして活躍したりすることが夢。
自分の強みは、音楽に対する情熱と知識。弱みは、集中しすぎて周りが見えなくなるときがあること。自分の価値観は、自分の好きなことに打ち込むことと、仲間と協力すること。

ステップ3:チャネル設定

ターゲット人材が自社を認知してから入社するまでのプロセスを可視化し、各プロセスで必要な情報やアクションを検討。今回は、以下を意識しながらチャネルを設定しました。

・ターゲット人材がどのような媒体や手法に触れやすいか
・ターゲット人材がどのようなメッセージやコンテンツに反応しやすいか
・自社の強みや魅力をどのように伝えるか
・自社製品への関心や理解度をどのように高めるか

※採用課題によって、チャネル設定で意識するポイントは変わる。

ステップ4:採用コンセプト・コンテンツ企画

採用ターゲットのニーズに合った自社の魅力を伝えるために、どのプロセスでも一貫して伝える採用コンセプトを「私は音で、経済を盛り上げる。」に設定。この採用コンセプトを軸に、各プロセスで的確なコミュニケーションが取れるコンテンツを企画しました。なお、コンテンツ企画の際には、以下の項目に沿って思考を深めていきました。

コンテンツの目的:認知度向上、関心度向上、応募意欲向上、内定承諾率向上
コンテンツの形式:動画、記事、イベント
コンテンツの内容:自社製品や自社に関する情報、業界情報や音楽情報など
コンテンツの配信方法:SNS、オウンドメディア、自社サイト、対面

ステップ5:行動状況の計測・改善

最後に、ターゲット人材の行動データやフィードバックを収集、分析。採用マーケティングの効果や課題を把握し、改善策を考えました。行動状況を計測する際には、以下のような視点からデータを収集しました。

・コンテンツごとにどれだけ閲覧されたか、どれだけ反応があったか
・コンテンツごとにどれだけ応募につながったか、どれだけ内定承諾につながったか
・コンテンツごとにどのような感想や質問が寄せられたか
・コンテンツごとにどのような改善点や改善案があるか

<改善点>
・自社製品を使って演奏する有名アーティストへのインタビューはSNS上でも話題となり、採用サイトへの流入が増えた。ただしコストも大きかったので、来年の継続を視野に入れつつ、別の企画案も検討。
・「仕事内容をもっと詳しく知りたい」という声が多かったため、採用サイトの仕事紹介ページを充実させる。
・内定者懇親会は好評だった。一方、内定者に向けたキャリアプラン、教育制度の記事へのページビューは少なかったため、記事配信は中止してニーズの高かった動画にシフト。

採用マーケティングの実際の進め方についてイメージはできたでしょうか。
最後の分析で得た改善点を次に活かしていくことで、施策がブラッシュアップされていくのです。


■まとめ

以上、採用難の時代でも優秀な人材を獲得するために有効な採用マーケティングについてご紹介しました。
仕組みがうまく機能し始めれば、大手企業との人材獲得競争においても対抗できるようになるでしょう。

当社では、採用マーケティングに活用できるツールもご用意しています。採用マーケティングの始め方や進め方についてご相談がございましたら、お気軽にご相談ください。

以下より、採用担当者向け資料「母集団形成におけるチャネル選定の考え方とポイント」をダウンロードいただけます。採用戦略における母集団形成の方法についてまとめていますので、ダウンロード申請の上、ご活用いただけましたら幸いです。

ジャンプ株式会社
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