【イベントレポート】石綿 純 氏(株式会社デジタルホールディングス グループCHRO)・武井 章敏 氏(株式会社Interaction Pro代表取締役)「DX人材採用の過去・現在・未来を語ろう」
ジャンプ株式会社は、昨年につづき、24新卒採用に向けたインターンシップ募集が本格スタートする2022年6月1日に、有識者を集めたオンラインイベント『経営×採用STRUCTサミット』を開催いたしました。
経営のための採用、経営に貢献する採用人事というものを、改めて見つめ直す1日にしていただくことで、人事のみなさまにとって、活力や新たなナレッジ習得につなげていただきたい、という思いで開催しているイベントです。
本記事では、石綿 純 氏(株式会社デジタルホールディングス グループCHRO)と武井 章敏 氏(株式会社Interaction Pro 代表取締役)によるプログラム「DX人材採用の過去・現在・未来を語ろう~V字回復の採用戦略LIVE~」について、講演の様子を一部ご紹介いたします。
マーケットをリードするために、V字回復を実現するために、世界と伍して戦うために、最重要テーマと言える「DX」。
しかし各社の取り組みでボトルネックになっているのは、DXを担う人材の採用と活躍の場づくりです。
今回は、アクセンチュアとリクルートというDX人材採用の先駆的企業でHR戦略を実現した武井章敏氏と石綿純氏の対談により、これまでのチャレンジから得た学びとこれからの構想を語り合っていただきました。
尚、イベント当日の動画もご用意しております。お二人の経験談など、詳細もお聞きいただけますので、ぜひ申請の上、ご活用ください。
リクルート入社後、人材メディア領域の営業部門から、人事部門へ。グループ人事部長、スタッフサービス・ホールディングス事業開発部長を経て、光通信人事担当役員。2018年にデジタルホールディングスへ入社、グループCHROとして人事部門を管掌。
マツダにて、営業・海外での⽣産⼯場の⽴ち上げ・⼈材開発・⼈事制度の改⾰をリード。その後、アップルジャパン、ファーストリテイリングにて⼈事部⻑を歴任。2020年3⽉末までアクセンチュア執⾏役員⼈事本部長 兼 グローバルHRマネジメントコミッティメンバー。
●はじめに
石綿氏:デジタルホールディングスの石綿です。今日は、武井さんと二人で進めていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
武井氏:よろしくお願いいたします。
石綿氏:DX人材採用の過去現在未来を語ろうというテーマで、どこまで皆さんのご期待に応えられるかわかりませんが、これまでの経験と、今やっていることを中心にお話できればと思っています。
今日は、3つのテーマに沿ってお話を進めていきます。
1.DX人材とは?
・ビジネスルールとの関係
・過去、現在は、どんな人材要件なのか
2.未来に求められるDX人材とは?
・現在から求められる変化はどこにあるか
3.DX人材とイノベーション
・イノベーションを起こすために必要なものは
●DX人材とビジネスのルールの関係
石綿氏:まず、前段ですが、ある業界が新しい企業によってルール変更を余儀なくされる3つの要因について、コンサルティング会社のベインが調べたものがあります。
①(自分たちの商品やサービスよりも)コストが安い競合商品が登場する場合
②顧客体験が良くなる場合
③新しいビジネスモデルが生まれた場合
皆さんのビジネスを思い浮かべながら見ていただけるとわかりやすいと思います。
自分たちよりもコストが安い競合商品が登場した場合にルール変更が起こる、あるいは自分たちが提供しているサービスよりも、より顧客の体験が良くなった場合、やはりルール変更が起こります。
3番目は、ビジネスモデル全体が変わり、今のモデルが古くなり、この新しいモデルでしか通用しなくなった時に、ルール変更が起きます。 日本でも色々ありますが、皆さんご存知のUberという配達サービスや、Airbnbのような、自社のホテル・部屋を持たずに、宿泊業を世界最大で広げている会社です。このような会社の例に見るルール変更というのは、結構大きなところだろうなと思っています。
石綿氏:武井さんは、アクセンチュアというコンサルティングファームにいらっしゃいましたが、このあたりのビジネスモデルも色んなものをご覧になってきたと思います。DXとビジネスのルール変更、というところで、何かご意見あればいただけますか。
武井氏:石渡さんに「何かご意見がありますか」と改まって言われると、緊張しちゃいますが…(笑)DXとビジネスのルール変更でいうと、2つの観点があるのかなと思っています。
ひとつは、このようなゲームチェンジャーは、決して大手企業や従来自社が競合としてセグメント化していた企業からではなく、それ以外のところからも生まれてきているということです。
私も、十数年、若手・ベンチャー企業を支援する会社(SAMURAI)に携わっていますが、数名のベンチャー企業がどんどん巨大化していく、日本の名だたる企業をクライアントに持って、まだ上場もしていないような企業が市場のパイを取っていくという実態を目にしています。
ですから、競合は、必ずしも大手企業や自社競合だけではなく、色んなところから生まれてきているというのが、ここ5~10年の大きな変化で、今後ももっと加速するんじゃないかと思っています。
もう一つは、各企業の内側の事情が変わってきているということです。
以前は、ピラミッド型の組織が多く、決める人と実行する人に分かれ、あるいは経営企画や戦略企画といった部門に優秀な人材が集まり、決定権を持ち、決めたことに対して現場が動く、という形だったと思います。
ましてや管理部門はバックオフィスといわれ、事務方の部門という位置づけです。なぜそのようなピラミッド構造だったかというと、やはりボリュームの時代が続いていたからです。どれだけ早く、安く、たくさんの商品やサービスを提供するかが求められ、世の中全体が生産性を上げるために、ピラミッド型で、考える人・決める人・実行する人と役割があったわけです。
昨今は、まさに「DX時代」と言われていますが、あらゆる部門が等しく企業価値を生んでいかないと勝てない世の中になってきていると思います。
例えば、コンサルティングファームでは、以前は戦略コンサルが「上流」、オペレーションを司るチームは「下流」とも言われていましたが、今ではとんでもないことです。
戦略もオペレーションも同じようにデジタルテクノロジーを駆使していかないと、クライアントに対して有益なサービスを提供できないですし、どんな領域でも優秀な人材が求められ、どんな領域でもデジタルや戦略、実行力や改善力というあらゆることが求められています。これは所謂「内なる変化」です。この2つの変化が「DX」とか「トランスフォーメーションしなきゃ」と言われる大きな背景になっていると思います。
石綿氏:ありがとうございます。やはり、総力戦になってきている、というのがすごく印象的だなと思っています。
うちの会社でも、数年前に「管理部門」という名称をやめました。「管理する人」「管理される人」の間には、上下感が出てきますし、先ほど武井さんのお話でも、「決める人」「オペレーションする人」というのがありましたが、そうなった瞬間に思考がその枠を超えなくなってしまうと思います。
一つ目のお話にあったように、そんな枠は関係なくベンチャー企業がどんどん既存の業界に攻めてくるわけで、そこに太刀打ちできない、加速するところについていけないようであれば、求められる人物像は相当変わってきていると受け止めています。ですから、DXが進むことで、より企業の内側も変わらないと通用しなくなる、そんなことかもしれませんね。
●DX人材の過去、現在は、どんな人材要件なのか
石綿氏:次に、「DX人材」は、過去、現在ではどのような人材要件だったのかをおさらいしながら、未来に向けての話ができるといいかなと思います。
過去には、「DX人材」「IT人材」「WEB人材」など色々ありましたけれども、武井さんは、このあたり、「過去」はどんな定義で採用をされていた記憶がありますか?
武井氏:私が長年いたアクセンチュアでは、世の中が「DX」って言い出した時には、「DX」という言葉は使わなくなっちゃったんですよね(笑)
アクセンチュアでは「DX」という言葉が生まれる前は、「New」と言っていました。その中には、メインとしてクラウドやセキュリティ、AIなど様々な領域がありました。新しい領域をどんどん活用して、ボリュームから新しいバリューを提供する時代に変わっていかないと企業も生き残れないですし、コンサルティング会社としても、そのような支援ができないと生き残れない、という考え方が一つあったと思います。
もう一つは、どこかに正解が書いてあるわけでもないですし、なかなか定義するのは難しいのですが、特に「デジタルトランスフォーメーション」といった時に、IT人材の中でも、ITをツールとして使うだけではなく、そこから新たな価値を創造したり、プロセスをきちんと構築できたり、あるいはそれを具体化できる人材は昔もたくさんいたと思うのです。そのような方々が、今は「デジタル人材」とか「DX人材」と言われているのかなと。
ですから、単に新しいデジタルツールを使える人ではなく、ツールを使って何か変革とかチェンジ、新しい価値を生み出せるような人材が、企業の求める「DX人材」なのかなと思います。
石綿氏:今、聞きながら思い出した過去の話がありまして、リクルートでも紙からネットに変わる時代に、WEBに特化した人材をたくさん採用し、育成もしていました。ただ、今考えると、その方々の中にも、「DX人材」になった人、ならなかった人たちがいるわけです。
「DX人材」になった人たちは何が要件だったかというと、クラウドとかAIとかデータとか、様々なスペックを統合的に身につけていく中で、それらのデジタルツールを使って、さらに自分のケイパビィリティを増やしていけることでした。今、マーケットで活躍しいているのも、そのような人たちなのだろうなと思いました。
今って「DX人材の採用」を紹介会社にお願いしても、みんな頭を抱えてしまう、DX人材が高騰しているって聞きますよね。そもそもどこにいるのかと。現在の「DX人材採用」について、武井さんはどのように見られていますか?
武井氏:「DX人材」って、流行り言葉のようになっているのかなと感じています。
実際に、企業さんから「DX部隊をつくりたい」とか「DX人材を採用したい」という相談をいただいた際、最初に確認しているのが、「何を実現したいのか」ということです。「何がしたいのか」によって、「DX」という前に、クラウドなのかセキュリティなのか、AIなのかと具体的に考えていかないと、どんなに優秀な人材を採用したとしても、具体的なアウトプットは生み出せないのかなと思っています。ですから、まず「何がしたいのか」、そのために、どのような知識、経験、スキルを持った人が必要かを掘り下げないといけないですよね。
これはDXに限ったことではないですが、「DX」という言葉に流されているような、流行になっている面を危惧しています。
石綿氏:いわゆる「DX人材」を一人採用したからといって、バラ色の結果が待っている、ということはないわけですよね。
武井氏:そうですね。一人の採用でなんでも解決するなんて、絶対ないですよね。やはりその領域のプロをしっかり採用することが大事、というのはDXでもそうでなくても、同じじゃないかと思います。
戦略部門とオペレーション部門をしっかりインタラクションするとか、あるいはインフラのアウトソーシングとアプリケーションのアウトソーシングチームをしっかりインタラクションするとか、このような体制・組織の作り方、仕事の進め方と、DX人材の採用を並行してやらないと、どっちかに偏ってもうまくいかないのかなと思っています。
石綿氏:「DX人材の採用」という話がでると、ある会社では「CIO」を採用するんだ、というケースが多々ありました。しかし、CIOを採用してもDXが進まなかったというのは、結構例が多かったかなと思っています。CIOとDX人材の差はどこにあるか、武井さん、そのあたり何かお考えありますか?
武井氏:もう何年も前になりますが、CIOとCDXOの違いは何か、という話を大手企業のCXOの方々とお話をさせていただいたことがありました。
CIOでは、生産性を上げる、コストを下げる、納期を短くするという、いわゆるコストサイドの改革にフォーカスした企業や、IT企業トップの方々が多かったかなと思いますし、今でも多いのかなと思います。つまり、システムを導入することで、コストを下げていこう、ということです。
一方、CDXO、DXを進める人材については、既存の生産性向上とかではなく、どうやって新しいビジネスや事業、サービスを生み出すかにフォーカスしていると思いますので、役割としては似て非なるものだといえますね。
その上で、自社では何をしたいのか、例えば、物流領域なのかファイナンス領域なのか、どんな領域でトランスフォーメーションをしたいのかによって、求める人材像も変わってくるのかなと、思っています。
石綿氏:僕も企業人事をしていた時に、自分のわかる領域の採用はイメージもつくし、応募者との面談も自由に進めることができたのですが、「DX人材の採用」とか、先ほどのようなIT人材の対応になると、人事部の人たちから若干遠くなる領域だったりする部分もありますよね。
やはり応募者との対話でいうと、人事がそこに対してどう入っていくのかが難しい場面もあるのかなと思っています。私自身、現場の人にも一緒に入ってもらって面接をしたという経験もありましたが、実際の採用を進める際、人事部の方々が気を付けた方がよいこと、あるいはセッティングするときに「これだけは外しちゃいけない」ということは、何かありますか。
武井氏:僕が人事と担当していた時に、毎日毎日考えていたのは「将来どうなるんだろう」ということです。
例えば、「クラウドを買ってください」とお客様に提案した場合、当時はクラウドも一般化していないので、「社内のサーバに大量のデータを置いて大丈夫なのか」とセキュリティの不安や懸念が出てきます。となると、セキュリティ人材が必要になりますよね。
次に、クラウドにデータを保存したらそれでいいのか、というと、入れたデータを管理するためにも、分析ができるデータアナリティクス人材が必要になるな…と。
つまり、「クラウド売る」ビジネスであっても、セキュリティの担保やデータ分析、将来的なオートメーション化や業務効率化を考えると、採用していかなきゃいけない人材が2~3年に渡って見えてくるわけです。
そんな風に、相手のニーズを考えて先手を打って、人材のサーチを進めること、先を読んで行動することが大事なのかなと思っています。
上手くいっていない採用チームの傾向としては、現場のニーズとリクエストに基づいて、リクエストが来てからサーチを始めています。なので、事業や経営を先読みして、必要な人材を考えサーチして、リアルに採用が必要だと思った瞬間には既にリストがあるような状態が、一番理想的ですよね。これを仕組みにしていかないと、今のDX時代には勝てないのかなと思います。
石綿氏:そうですよね。難しい職種になればなるほど、先読みしてサーチをかけていかないと、どこかで取り合いになりますからね。必要な時に、他社より先に声をかけられるかどうか、これは結構重要ですね。
これからの人事や採用チームに求められることって、DXのビジネス自体も理解した上で、それが自社にとって将来にどう繋がるのか、仕事やビジネスモデルの因数分解をしながら、数年先にはどんな人材が必要かを考える。まさに、経営の仕事ですよね。
武井氏:たぶんそこまでやらないと、コーポレート部門としての役割や価値は出せないと思いますし、そこまでやって初めて、経営のパートナーとして、会社の将来に新たなトランスフォーメーションを生み出すことにつながるのかなと思います。
日本企業だと、明確なリターンが見えないと、なかなか投資しない傾向にありますよね。「将来的にこんな人材が必要になるから、サーチしましょう」と言っても、「本当にそうなのか」「確証はあるのか」と、なかなか納得してもらえずに結果として進まない。決断が行われないのでアクションにつながらない傾向多いと思うんです。ですが、スモールスタートしながら、レバレッジを張りまくるって言うのかな、そういうことが必要ですよね。
石綿氏:人事としてのレバレッジを張りまくるって、いい表現ですね。
武井氏:どこがヒットするかなんてわからないので、何かが始まった時に「今から調べます」だと、もう遅いんですよね。もっともっと、採用や教育といった人への投資を重視して、レバレッジを張りながら、ここぞというときに一点集中で網を乗り越えていくような考え方が必要かなと思います。
石綿氏:そうですね。お金を稼ぐところにしか投資できないっていう傾向は、外資よりも特に日本企業の方が多いかもしれませんね。
ここまで「現在」の話が中心でしたが、次は「将来」について、話していきたいなと思います。
●さいごに
本記事でお届けする開催レポートは、以上です。
対談の後半は、「未来に求められるDX人材とは」「DX人材とイノベーション」というテーマで、「DX人材の採用」に役立つメッセージをいただきました。
ご興味がございましたら講演動画を申請の上、ご活用頂けましたら幸いです。
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STRUCT REPORT内の特集『V字回復の採用戦略』では、お二方のインタビューもご覧いただけます。
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人材の価値を引き出す経営。人事のプロが経営に関わることの意義。
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●元・アクセンチュア/武井氏(後編)
アクセンチュアの働き方改革は、どのように推進されたのか。
ジャンプ株式会社
働きたくなる会社を、日本中に。
「世界にひとつの採用戦略を。」をスローガンに採用力の強化により、企業価値そのものの向上までを支援する会社。本気で、会社を変えたい。本気で、会社を良くしたい。そう強く決意する皆さまに、採用戦略、組織戦略、ブランディング、販促・集客、などを支援しています。
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