『無くても死なない制度』は作らない。やらないことを決める大切さとは。 ~GAテクノロジーズ/清家氏(後編)~
経営の危機に人事が価値提供できることとは何か。
ジャンプ株式会社の代表・増渕が、プロ人事の方に、当時の状況や心情、取り組んだ施策などをお伺いするインタビュー企画「V字回復の採用戦略」。
第十回目となる今回は、株式会社GA technologies(以下GAテクノロジーズ)でグループ人事室長を務める清家良太さんにお話を伺いました。
本記事はその後編となります。(→前編はこちら)
2007年に新卒で旭硝子(現AGC)に人事として入社。国内・海外人事として活躍した後、アクセンチュアに転職し人事・組織コンサルを経験。その後、DeNA、ビズリーチといったIT企業で人事として事業成長に寄与。ビズリーチでは事業推進室にて営業も経験。2019年3月にGAテクノロジーズにCHROとして入社し、現在はグループグループ人事室長を務める。
2008年、ジャンプ株式会社を設立。「働きたくなる会社を日本中に」をミッションに、採用力強化に特化した事業を展開。20年以上の採用コンサル経験をもとに、事業を伸ばす採用戦略フレームワーク「STRUCT」を開発。採用戦略オープン講座「STRUCT ACADEMY」を立ち上げ、主宰として指導にあたる。
増渕:
前編に続き、よろしくお願いします。
自身を成長させるためにIT企業を選ばれたというお話でしたが、実際、DeNAではどういったお仕事をされていたのでしょうか。
清家:
キュレーション事業のHRビジネスパートナーとして、iemo・MERY・Find TravelといったDeNAが買収した企業のカルチャー・制度を作っていくことと人材採用がミッションでした。
この時に買収した先のベンチャー企業の経営者と直接仕事をしたことで、私の価値観は大きく変わりましたね。
増渕:
具体的にはどういった経験をされて、どんな気づきかあったのでしょうか。
清家:
とにかく一緒に仕事をする上でボコボコに怒られました(笑)。
彼らは事業家なので、批評家はいらないんです。「これがいいと思います」ではなく、いいと思ったのならお前がやれ、というのが、彼らの考え方なんです。自分は批評家でしかなかったことを突きつけられましたね。
事業を成功させられるかどうかは、やりきるエネルギーだけ。
増渕:
急成長を遂げているベンチャー企業で働く方々は、清家さんがそれまで出会ってきたビジネスパーソンと何が違うのでしょうか。
清家:
エネルギーが圧倒的に違います。彼らを見ていて思ったのは事業を成功させられるかどうかは、やりきるエネルギーだけだということです。
今の時代とは逆行しますが、経験や能力が足りなくても、その分働けばいいじゃん、という人たちばかり。そして、それを楽しそうにやるんです。
増渕:
同じインターネットカンパニーでも、DeNAというスケールした企業と買収した先のスタートアップ企業の両方の組織で働くことで、様々な気づきを得たということですね。採用にも関わられたと仰っていましたが、苦労されたことなどはありましたか。
清家:
結果的に1年で8名から150名規模の事業部になったのですが、そこまでのスピード感で大量採用をしたこともなかったですし、今までDeNAにはいなかった人材を採用しなければいけなかったので、採用のやり方も変えなければなりませんでした。
増渕:
具体的には、どういった施策をされたのですか。
清家:
人材紹介会社向けのエージェント説明会を実施しました。
それ自体は珍しい取り組みではないかもしれませんが、なぜ自分がこの会社、事業を良いと思っていて、どんな想いで採用活動をしているのかを真摯に伝えるようにしたんです。
約50名のエージェントの方に集まっていただいたのですが、最後に大きな拍手をいただきました。プロジェクトを一緒に推進する仲間として、エージェントの方々を巻き込むことに成功した、と実感できた瞬間でしたね。
この時の経験から、今でもエージェントの方と接するときには、自分の想いを真摯に伝え、同じプロジェクトの成功を目指す仲間としてプロジェクトに巻き込めるように心掛けています。
事業を作る側へ。
増渕:
この後、ビズリーチへ転職するわけですが、DeNAにずっといる選択肢はなかったのですか?
清家:
ありました。ですが人事としてより大きな役割で仕事をしてみたいと思っていた時に、ビズリーチからその機会のあるオファーをいただいたんです。
増渕:
ビズリーチには人事企画部長として入られたんですよね。
清家:
そうです。新しい組織制度に改定していこうという段階だったので、その制度を企画、そして社員へインストールし、組織活性化の取り組みを考えるのがミッションでした。
増渕:
これまでは事業部単位での採用の責任者だったところから、全社的な人事に関わるようになったわけですね。
清家:
そうですね。ですが実はその後、私は人事企画を外れて、事業を作る側の仕事を経験することになるんです。
『無くても死なない制度』は作らない。
増渕:
そのあたりを詳しく聞かせていただけますか。
清家:
はい。私はこれまで人事やコンサルといった仕事しかしてこなかったので、事業を自分で作っていないというコンプレックスを以前から持っていました。
このままだと単なる人事のスペシャリストで自分のキャリアが終わってしまう危機感があったんです。ですから組織改編のタイミングで希望して、事業を作る側として、新卒採用に関わる新事業部のビズリーチ・キャンパスに関わることにしたんです。
増渕:
事業を作る側になったことで、何を学べたのでしょうか。
清家:
例えば、私がリーダーをしていた営業のチームに、人事が新しく採用したメンバーを入れてきたことがありました。
1年後、3年後を見据えて、こう育てていくという、中・長期での育成の方針を共有されたのですが、現場では目の前の3ヶ月の業績がなにより大切。どうしたら最短で独り立ちし、戦力化できるかの方が圧倒的に重要なんです。
人事が考えた施策を受ける立場になってみて初めて、自分が人事をしていた時に、どれだけ現場にとって重要ではない『無くても死なない制度』を作っていたかに気づけたんです。
増渕:
『無くても死なない制度』というのは面白いですね。
清家:
この気づきがあってから、私はやった方がいいは、やらない。と決めました。やらないことを決めること、捨てることをなにより大切にしていますね。
特殊な施策はしない。
増渕:
そこからGAテクノロジーズにはどういった流れで入社したのでしょうか。
清家:
私には100人100様の世界を作っていきたい、という想いがあります。ですが当時のビズリーチは企業規模が大きくなっていて、ある程度、仕組みで回せるようにしなければならず、その実現が難しかったんです。
そういった話をGAの代表である樋口にした時に、「だったらウチでやってみたら?一緒に叶えましょう」と言ってくれたんです。それが転職の決め手でしたね。
増渕:
GAに入ってみてどんな印象でしたか。
清家:
正直、何も整っておらず、カオスな状況でした(笑)。
私が入社した時は300名くらいの規模で上場もしていましたが、人事や育成に関しての制度がほとんどなかったんです。
増渕:
具体的にはどういったことをされたのですか。
清家:
最優先でやるべきことだけを集中してやって、特殊な施策はしないのが私のポリシーです。なのでGAテクノロジーズでも、いきなり制度改定に思いきり踏み込むようなことはせず、半年ごとに少しずつ整えていきました。
人事制度を浸透させることに集中する。目標設定をちゃんとすることに集中させる。そして、それができるようになったら、WILL・CAN・MUSTを社員から引き出せるように目標設定ができるようにする。
どこもやっている基本的なことなのですが、それをしっかり一つずつ集中してできるようにすることを大切にしています。
価値観への親和性をもとに、採用する。
清家:
育成の仕組みも整えていきました。
経営陣が人材育成の優先順位を下げていた中で、まずは人材育成への重要性を感じてもらうところからスタートし、育成のコンテンツを作っていきました。
入社者研修やマネージャー研修、ネクストリーダープログラムという、次世代のリーダーを育てる研修も作りました。
増渕:
採用に関してはどうですか。
清家:
新卒採用にも相当力を入れました。
私が入社したころは、人事があまり機能しておらず、内定者がほとんど辞退してしまっている状態だったんです。まずはそこをテコ入れすると共に海外の大学を卒業した日本人の採用にも取り組み始めました。
増渕:
それはなぜですか?
清家:
GAテクノロジーズとの相性がいいと思ったんです。
GAテクノロジーズでは「GA GROUP SPIRITS」という価値観を大切にしています。その中で、『強い意志』『やり抜く力』という項目があるのですが、高校を卒業して海外に行く時点で、そういった力は持っている可能性が高いですからね。
当時、コストがかかると大反対されたのですが、実は今では採用チャネルの中で一番多いのが海外大卒の学生なんです。
経済的にも精神的にも豊かな国を作る。
増渕:
今後やっていきたいこと、将来の話を是非教えてください。
清家:
大きな話になってしまいますが、日本を元気にしたいです。
昨年、子供が生まれたのですが、子供が社会に出るときに、日本が経済的にも精神的にも豊かな国になっていてほしいと思っています。それが心からの強いモチベーションになっています。
増渕:
それは人事という仕事を通じて実現するイメージですか?
清家:
そうですね。自分が関わる組織が活性化する、成長するというのが、ひとつの実現の仕方だと思います。
増渕:
最後に、人事の皆さんに何かメッセージがあればお願いします。
清家:
各社それぞれカルチャーもフェーズも違うので、これがベストだとお伝えできるものはないと思っています。ただ自社の採用の仕方を隠したりする企業もあるんですけど、そんなレベルの低い話をしていてはダメだと思います。
自分の会社だけ良ければいいという時代はとっくに終わっているので、日本全体を伸ばしていけるように、日本が世界で勝っていけるように知恵も連携しなければならないと思います。
増渕:
清家さん、本日は貴重なお話ありがとうございました。
清家:
こちらこそありがとうございました。
<清家さんのインタビュー記事 前編はこちら>
増渕知行
代表取締役 クライアントパートナー
理想を追求し続けたら、起業に行きつきました。ジャンプは自分の人生そのものです。ジャンプはクライアントにとって、頼れる同志であり続けたい。社員にとって、燃える場所であり続けたい。約束は守る男です。週末は野球がライフワーク。
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