Jump 働きたくなる会社を、日本中に。

STRUCT REPORT
V字回復の採用戦略

人事にとっての専門性とは。コロナ禍で、人事が心を配るべきこと。

増渕知行

経営の危機に人事が価値提供できることとは何か。
ジャンプ株式会社の代表・増渕が、プロ人事の方に、当時の状況や心情、取り組んだ施策などをお伺いするインタビュー企画「V字回復の採用戦略」。
第三回目となる今回は、株式会社Jストリームの田中潤さんにお話を伺いました。
本記事はその後編となります。(→前編はこちら

新卒で日清製粉株式会社に入社後、営業職を経て人事職を経験。その後、株式会社ぐるなびで人事責任者として一部上場後の急成長期を支える。2019年7月からは株式会社Jストリームにて人事部長を務めている。経営学習研究所(MALL)理事、慶応義塾大学キャリアラボ登録キャリアアドバイザー、キャリアカウンセリング協会gcdf養成講座トレーナー、キャリアデザイン学会代議員。にっぽんお好み焼き協会監事。

ゲスト:田中潤
株式会社Jストリーム 人事部長

2008年、ジャンプ株式会社を設立。「働きたくなる会社を日本中に」をミッションに、採用力強化に特化した事業を展開。20年以上の採用コンサル経験をもとに、事業を伸ばす採用戦略フレームワーク「STRUCT」を開発。採用戦略オープン講座「STRUCT ACADEMY」を立ち上げ、主宰として指導にあたる。

インタビュアー:増渕知行
ジャンプ株式会社 代表取締役

増渕:
前編から引き続きお話を伺います。改めてよろしくお願いします。

田中さんのおっしゃる「人事はオールラウンダーであったほうが良い」「意見を求められたときに断言できる専門性を持つべき」という人事像は、広さと深さを両方追求することになるのでなかなかハードルが高そうだなと…。

田中:
おそらく、それを難しいと感じてしまうのは、広さと深さを自分一人で担保しようとするからではありませんか?

増渕:
ということは一人でカバーするのではなくて、人脈とか、横のつながりで…

田中:
そうですそうです。専門優位って自分一人で担保できるものではないと思っています。もちろん自分自身がエキスパートとして強みにしている領域はあったほうが良いですが、それよりも大事なのは、困ったときに頼れるネットワークを築いておくことです。

たとえば、採用戦略については誰それ、評価制度については誰それに聞けばいいと、声をかけられる人脈をどれだけもっているかが人事の財産です。

増渕:
田中さんは40代のときにぐるなびに転職されて、さらに50代で現職のJストリームに転職されています。この年齢で転職ができるのは、やはり人事としてのご経験や実績もあると思いますが、横のつながりも大きかったのでしょうか。

田中:
私はキャリアについて、新卒のころからずっと、自分で積極的に選ぶのではなく川の流れに乗って来たという感覚しかないもので…、就職とか転職のことでは、あまりみなさんの参考になるような話はできませんが…(笑) 

たとえばぐるなびに入社した時も、偶然ご縁があってお声がけいただいたのがきっかけです。いまおっしゃられた通り、人に導かれてここまで来たという感覚は強いですね。

経営との対話に、人事メンバーも参加させる。

増渕:
人事の方のなかには、会社を渡り歩いてキャリアを作っていく方もいらっしゃると思います。田中さんの40歳を越えてからの転職というのは非常に興味深くて。新しい環境での立ち回り方など、参考になるお話を伺えると有り難いです。

田中:
私がぐるなびに入社した当時は、ちょうど東証一部に指定替えした直後でした。従業員数が、毎年100名ずつ純増していくような、まさに急成長のグロース期です。ベンチャー気質の会社で急激に成長してきたこともあり、私が入社した時には人事部がまだなくて、まず期待されたのは人事賃金制度の構築でした。様々なものをゼロから作り上げていく貴重な経験をさせていただきました。

増渕:
人事部はなかったんですか?

田中:
そうなんです。総務のなかに人事機能があるという状況でした。東証一部に昇格してここからさらに成長していくために、人事面を強化していく必要があるから手伝って欲しいと、お声がけいただいたのが入社の経緯です。

当時は、採用担当と給与担当しかいなくて人事機能はほんの少しという感じでした。多少、御用聞き人事ができてきたくらいです。入社時の幹部会議では「ぐるなびにも人事を創ります」と宣言したりもしました。

増渕:
そこから具体的にどんな流れで人事組織を確立していったんですか?

田中:
まず社長との対話の時間をいただきました。多いときは2週間に1度くらいのペースです。いま社内はこんな状態で、こんな制度があるんですが、こんな問題があって…と、現状の説明をして、意思決定に必要な情報をインプットさせていただきながら、人事制度をつくりあげていきました。

ミーティングには、社長と私と、あと人事チームのメンバーも同席させました。まずは人事制度を整える、仕組みをつくるをテーマに定めて、具体的な施策を持ち寄って繰り返しディスカッションし、決まったら即実行。この繰り返しです。

意欲の高いメンバーを選抜して会議に同席してもらうことで、社歴の浅い私に不足している社内関連の知識も補完してもらえますし、決定後の施策実施の精度とスピードをあげることもできました。

既存のメンバーの方に協力をあおぐのは、新しい環境で早期に成果をもたらす上では重要なことだと思います。

敷居を下げることで、現場との接点を最大化する。

増渕:
経営陣とは、入社前から人事強化という共通の目的で合意できていたはずなので、ざっくばらんに話を進めやすいところもあったと思います。一方で、現場向けの対応はいかがですか? 日清製粉のときは、営業としての経験が会社理解のベースになっていたと思いますが、今回は業種も変わって現場経験もない中で、分からないことだらけだったのではないでしょうか。

田中:
おっしゃる通り、手探りでしたね。最初の2年くらいは、部門単位で定期ミーティングの時間をいただいて状況ヒアリングをさせていただいたり、意図的に色々な部署の社内研修を請け負ったり。相互理解をいかに深めるかを意識していました。

特に研修は、個人的に私が研修を好きなのもありますけれど、いい機会になりました。研修を実施すると、参加する社員と1日中いっしょにいることになるじゃないですか。業務の話だけでなく、ちょっとした雑談もできますから、色んな人とつながるきっかけになります。

研修内容によっては、外部の研修サービスを使うこともありましたが、その際にも、つきっきりでサポートに入るようにしていました。現場と距離を縮めるせっかくの機会ですから。

当時、講師をお引き受けいただいた方にはうるさい担当者だと思われたかもしれませんが、受講者の反応が悪いときには、ランチタイムに講師と打ち合わせをして、午後のカリキュラムをガラッと変えたりもしました。

増渕:
ここで研修領域のご経験が活きるんですね。採用だけでなく、研修領域もカバーできると現場との接点を持ちやすくなりますね。

田中:
もちろん全てがスムーズにいったわけではないですよ。ぐるなびで新鮮だったのは「営業できなかった時間ぶんの、利益を出せるだけの学びがあるか」を求められるコスト感覚です。鋭い視点だと思いましたし、研修担当としては耳が痛かったですね。研修にかかるのは費用だけではなく、その時間ぶんの人件費もかかれば、機会コストも考慮する必要があるわけです。

様々な研修を企画しましたが、必須参加と自主参加にわけて、自主参加の研修は休日に自己啓発として実施していました。休日でも参加したいと思ってもらえる、人気の出る研修を創るのが、担当者の腕の見せどころです。

増渕:
そもそもの話になってしまうかもしれませんが、中小企業だと、人事が積極的に介在するような「The研修」はそこまで多くないと思います。人事が現場と接点をもつきっかけで、他に何か思いつくものはありますでしょうか。

田中:
これはJストリームに入ってすぐに実施したことですが、当時は、毎週水曜日がノー残業デーでした。水曜日に担当が「今日はノー残業デーだから早く帰りましょう」というメールを打つんですね。でも、これは忙しい人をしらけさせる効果しかありません。

そこで早帰りメールとともに仕事の生産性を高めるTIPSを毎週送るようにしました。毎週好評で、多くの人から感想などの返信をいただきました。ちょっとした工夫で接点はつくれるんです。

あとはどれだけ直接対話の機会を増やせるかが大事です。人事への敷居を下げることを意識すると良いと思います。

増渕:
敷居を下げるとは、具体的にどういったことでしょう。

田中:
私はいつも「日本一敷居が低い人事になる」ことを意識して業務に取り組んでいます。誰でも相談しやすいムードづくりは大事ですが、相談を受けたら全力で問題解決できるようサポートすることも大事です。この繰り返しで信頼関係がつくられます。

withコロナ環境で、人事が心を配るべきこと。

増渕:
Jストリームへの入社は2019年の7月だと思いますが、入社して、さあこれからというタイミングでコロナウイルスが拡大してしまって。当初描いていたビジョンもなかなか予定通りにはいっていないと思いますが…。

田中:
それは逆ですね。コロナウイルスの拡大への対処で、様々なことが加速化しています。何もかも変えていかないと上手くいかない世の中になりました。10月からは恒久的なテレワーク制度も導入しています。

動画配信の会社ですから、業績はありがたいことに絶好調だと言えます。ただ、業績の良い時こそが大事で、次への布石をいかに打てるかは真剣に考えているところです。その一つとして人事賃金制度の改善に着手しています。

増渕:
逆に、いま田中さんが、コロナの影響で業績が厳しい企業で人事をしていたとしたら、どんなことを考えられますか?

田中:
そうですね…難しいですけど、社内を明るくする施策はないかを考えますね。社内のムードを変えることは費用をかけなくてもできますから。あとは、とにかく変化はチャンスだと考えられるかでしょうね。厳しい状況であっても、明るく大きく考えることを忘れてはいけないと思います。

あと気になっていることがあって、コロナの影響で急激にテレワークが増えていますよね。対面で仕事していたときには隠れていた問題が、テレワークによって浮き彫りになっているのではないかと感じています。

たとえば厳しい指導をしてメンバーが落ち込んだとして。職場だったらフォローできますが、オンライン会議の通信を切ったあとに暗い顔をしていても気づけないわけです。プレイングマネージャーが背中を見せて育てる方法も成り立ちません。オンライン会議には、仕事に取り組む上司の背中は映りませんから。マネジメントに携わる方、みなさん共通の課題ではないでしょうか。

管理職の方は、異変を察知できる感性を磨くと同時に、そもそものマネジメントレベルを上げていく必要があるでしょうね。まさに管理職にとっては、自分の仕事のやり方を変えて成長するチャンスがきているんだと思います。

増渕:
個人の底上げだけでなく、企業としての取り組みも大事になってきそうですね。

田中:
新人事賃金制度の導入にあわせて、人材開発体制もリリースする予定で、そこでマネージャー陣に何か具体的な支援ができればと考えています。

従業員の意識改革。「困った」を発信できる組織に。

田中:
あと先日、テレワークを円滑に進めるためのオンライン研修を行いました。その中でメンバーのみなさんに強くお願いをしたのは、「何かあったら騒ぐこと」です。実は、リモート下でのマネジメントでは、上司は暗闇のなかで小さい懐中電灯一つで歩いているようなものなんです。ですから、大騒ぎしてもらわないと、なかなか異変に気づくことができません。

増渕:
一般的には「声をあげる」なんていう言い方がされますが、リモートだとより大きな声を出さなければ届かないと。

田中:
はい。体調が悪いとか案件が滞ってるとか。こんなこと相談して大丈夫だろうかと思うようなことでも全然いいんです。問題が小さいうちに対処できれば楽に解決できます。

日本の職場の美徳でしょうか、ちょっとしたことでは騒ぐな、自分で何とかしなさい、という風潮が好まれていたかもしれませんが、コロナをきっかけに根本的な価値観が変わりました。風邪をひいた人が頑張って仕事のために出社したら、怒られる世の中になるなんて、すこし前までは誰にも想像できませんでしたよね。

いまのような環境下では特に、自分の知っていることがすべてだと思わないことが大事です。現場も経営も、日々、状況が変化しています。相互理解するための対話を欠かず、小さな異変も見逃さないこと。有事のときこそ、人事としての地力が試されます。

withコロナの経営環境の変化を、組織変革の好機に変えるために。人事の果たす役割は、今後もますます大きくなっていくと思います。

田中さんのインタビュー記事 前編はこちら

増渕知行
代表取締役 クライアントパートナー

理想を追求し続けたら、起業に行きつきました。ジャンプは自分の人生そのものです。ジャンプはクライアントにとって、頼れる同志であり続けたい。社員にとって、燃える場所であり続けたい。約束は守る男です。週末は野球がライフワーク。


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