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採用コラム

結局のところ、2021年卒以降の新卒採用って、どうなるの???

増渕知行

「結局のところ、2021年卒以降の新卒採用って、どうなるの???」って、気になりませんか?メディアには、いろんな言葉が躍ります。一番多いのは、この表現でしょうか?

「新卒一括採用」から、「通年採用」の時代に。

しかしこの表現、見るたびに違和感をもちます。この表現の前提条件は、「ほとんどの企業が新卒、具体的には大学生を卒業直後の4月入社で採用することに依存した組織づくりをしている」となります。では、果たしてそうなんでしょうか?

■採用マーケットのリアルな姿

この「通年採用」の具体的選択肢としては、以下が挙げられていることが多いです。

1.中途採用
2.海外大生採用
3.既卒者採用(第二新卒採用)

ということは、これらは「ほとんどの企業がとっていない選択肢」ということなのでしょうか?いやいや。ちがいますよね。説明するまでもないかもしれませんが、20年以上採用マーケットで仕事している自分からしたら、「何を今さら」しかない。

まず中途採用マーケットが活況を呈していて、やっていない会社を探すほうが難しいくらいなのは言わずもがな。海外大生の採用だって、DISCOさんのサービスつかってチャレンジしている会社は数十年前からたくさんある。第二新卒採用に至っては、自分が知る限りでも二度の「ブーム」がありました。一度は2000年前後のITバブル期。二度目はリーマン直前の2006,7年あたり。基本的に新卒採用が売り手市場化すると、みんな「第二新卒狙おうぜ」となってきたわけです。

これは別にベンチャーや中堅・中小に限った話では全然なくて、内資の大手もほとんどの企業が新卒一括に依存しない「多チャネル通年採用」を同時に進行してきた歴史がある。経団連の方針うんぬん以前に、マーケットの競争原理のなかで自然と一般化しているのです。とはいえ新卒採用が組織づくりの主役となっている企業が多いのも事実。それはなぜなのでしょうか?

■新卒採用が主役になっている本当の理由とは?

新卒採用が組織づくりの主役となっている企業が多い理由。それは、「需給バランス」にあります。企業目線で言い換えると、「採りたいけどいい人が採れない」ことが多いからです。

そもそも「よい人材はなかなか転職しない」という傾向があった上に、SNSの普及でしばらく会っていない人ともつながりやすくなり、「転職活動をしないで転職する人」が増えました。エージェントにも登録しない。求人広告も使わない。優秀な人ほど「辞めよっかな」と思った瞬間知り合いから声がかかりやすい環境が整ってきたのです。中途採用したい企業はめちゃくちゃ多い。でも、「ほしい!」と思える人と出会える率はかなり低い。

第二新卒採用は、実はさらに難しい。採れた場合のメリットは、「染まっていない(=伸びしろがある)上に基礎ができている(はず)」という期待値なのですが、新卒で入った会社を短期間で辞める子には、他責性の高い子も多い。もちろんちがう子もたくさんいて、あくまで出現率として言及していますが、こちらも採りたい企業はめちゃくちゃ多くても、なかなかよい出会いを生み出しにくいのが現実です。

結論、「新卒一括採用から、通年採用の時代に」という表現は経団連の方針うんぬんでどうにかなる話ではなく、採用マーケットに起きる変化を正しく表現したものではないということです。じゃあ何もダイナミックな変化は起きないのか?それはそれで「NO」です。変化は起こります。ただし、じわじわ変わっていきます。ではその変化は、どのようなものなのか?

■長期的に起こるダイナミックな変化

経団連、大学、政府という三者間の思惑は、これまで一致しにくかった。それがここにきて、総論レベルではすり合うようになってきていると感じます。それは、「『ジョブ型採用』の促進による日本の競争力強化」です。ここにきて急に「ジョブ型採用」という言葉が流通してきました。その対義語として、「メンバーシップ型採用」という言葉も。このメンバーシップ型採用とは、いわゆる日本型の「総合職採用」とイコールです。配属を固めずに採用し、複数の部署や職種を経験させながら、社内価値を高めていくゼネラリスト育成の考え方です。

それに対してジョブ型採用は、端的に言えば中途採用に近い。今もっている「スキル」を重視し、配属先やポジションを明確にしてオファーする採用です。基本的には入社後もその領域の専門性を高めていくため、社外価値が高まりやすくなります。

▼「ジョブ型採用」を促進していく
▼それに適応しようと教育サイドも専門性を高める力学が働く
▼長期的に日本のビジネスパーソンのスキルが高まり競争力の向上につながる

というシナリオです。ここにきて出てきた、高校の「普通科見直し議論」もこの文脈でとらえるとわかりやすくなるでしょう。

長期的に見れば、ダイナミックな変化が起こっていく可能性は高い。乱暴な例えをすると、「大学がどんどん専門学校みたいに」なっていき、「新卒採用がどんどん中途採用みたいに」なっていくというイメージです。でもこれは、かなり時間がかかる変化ですよね。

さらに言えば、実際に変化するのは全体の何割くらいなんだろう?と。自分もそうでしたが、いわゆる「普通の文系」の学生が就職活動の時点で今後追求する専門性を妥当に選択できるのか?遊びたい盛りの大学生活を、スキルアップに当てる「ワークfirst」な学生はどの程度増えるのか?基本的には年々「ライフfirst」な学生の比率が上がっている状況下において、そのベクトルが逆回転するのはそう簡単ではないと思うわけです。

よって、少なくとも21新卒採用から数年単位のマーケット変化については、「現実的な見地に立った予測と対策」をする必要があると考えます。

■大多数の「ライフfirst」な学生はどう動く?

現実的な見地に立った予測と対策。それは、学生をざっくりと二極化させて考えて、思考・行動の変化を予測することが近道だと考えました。二極化の軸は、「ライフfirst」と「ワークfirst」です。

まずは「ライフfirst」。「仕事よりもプライベートが重要。仕事はあくまでもプライベートを充実させるための手段!」という志向性。現実として、圧倒的に出現率が高いのはこちらの層ですね。この「ライフfirst層」は、まとまった時期に動く傾向が変わらないでしょう。「みんなやるから俺もやる」という感覚です。昔で言えば、「ナビがオープンしたら動き出す」ですし、今であれば「インターンから動いたほうがいいんだよね」という意識です。

一方で力学的には、選考解禁という概念がなくなることで「前倒し傾向」が強くなる。よって、「前倒し×みんながまとまって動きやすい時期」である「3年生の夏休み」が企業と学生が出会うメインシーズンになっていくはずです。現在は夏のインターンは実施せずに冬のインターンから動き出している企業も多数ありますが、今後はそれでは後手にまわってしまう確率が高くなるでしょう。

しかし、決着のタイミングは早くなると想定します。現在は夏のインターンで初期接触した学生が最終的に決着するのは6月というケースも多々ある。この約10カ月というコミュニケーション期間は、企業・学生双方にとって負担になっています。内定出し~承諾・辞退のタイミングも前倒しとなり、「年内決着を目指し、こぼれても3月いっぱいで決着」がメインになると予測します。結論、

夏のインターンで初期接触し、年内決着するのがメインシーズンとなる。

というのが、私の予測です。

■一部の「ワークfirst」な学生は?

ではもう一つの「ワークfirst」。これは「仕事を通じて何かを成し遂げたい。そのために、最優先して時間を投資することをいとわない」という学生層です。ちょっと話はそれますが、医学部を選ぶ学生なんかは明確なわけです。医者になって貢献したい。だから医学部に行く。という動機ですよね。文系よりも理系のほうがこの意識は強くなります。大学で高めた専門性を活かす仕事につきたい、という意識は、圧倒的に理系のほうが強いですよね。

文系のワークfirst層は、早い時期から社会人と関わります。それは長期インターンであったり、社会活動であったり。そして企業側から見た採用活動としては、「1,2年生の時点から採用を意識した接触が増えていく」のがこのワークfirst層になるのです。

今後間違いなく増えるのが、「1,2年生をメインターゲットとした採用支援サービス」でしょう。同時に超早期接触学生をファン化していく「タレントプール採用」も普及が加速していきます。実はすでに実例があるのですが、本当に優秀だと思う学生には「卒業しなくていいからもう入社しちゃいなよ」という「中退促進採用」も多少は増えると思います。「超早期マーケット」で勝負できる企業はあくまで一握り。しかし少しずつですが1,2年生の間に「あいつもう動いてるらしいぞ」「もう決まったらしいぞ」という声が広まるようになり、

「超早期就活」も年々広がっていく。

というのが、もう一つの私の予測です。

■認識すべき、2つのキーワード

結果的に、まとめとしては以下となります。

●学生と企業の「初期接点」
→冬より夏のインターン。1,2年生から動く子も増えていき、「早期化」する。

●「内定出し」
→現在は双方にとってコミュニケーション期間が長すぎるため、自然と「早期化」する。

●「入社時期」
→ごく一部卒業前入社が出てくるが、基本的には卒業翌月で変わらない。「一部多様化」が妥当。

となる。よって、企業サイドから見たときは初期接点から入社までは「長期化」し、学生サイドから見たときはいつから動き出すかは「個別化」が進む。覚えておくべきキーワードは、

「長期化」と「個別化」

だととらえるのが、現実的な見地に立った予測です。

無題1

■マーケットが変化するなかで、これからの企業・人事に必須となるもの

「新卒採用が自由化する」ことは間違いない。しかしそれは「一括採用→通年採用」といった変化ではなく、「長期化と個別化」が加速する中で

「どの時期に動くどんな学生」を狙うか?=ターゲティング
「一人一人にどんなオファー」をするか?=オファー

の自由化が進んでいく、という見立てをするべきです。結果的に企業に、人事に求められるのは、この「ターゲティングとオファー」の設計を、自社ならではの方針に則って進めることが必要となります。シンプルに言い換えれば、「自社ならではの採用戦略」が必須の時代となっていく、ということです。

特に21新卒採用は、夏に開催される東京オリンピックの影響も考慮する必要がある。間違いなく「オリンピック前にメドを立てたい企業と学生の思惑」が一致し、内定出しの早期化が加速するはずです。

今回考察した「長期化」と「個別化」が進み、オリンピックの影響も出る21新卒採用。この方針と戦略企画は待ったなしです。21新卒採用の戦略企画は、「Only1Camp」とともにぜひ。

増渕知行
代表取締役 クライアントパートナー

理想を追求し続けたら、起業に行きつきました。ジャンプは自分の人生そのものです。ジャンプはクライアントにとって、頼れる同志であり続けたい。社員にとって、燃える場所であり続けたい。約束は守る男です。週末は野球がライフワーク。


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