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母集団形成の成功に向けた採用チャネル選定ガイド

安井省人
採用チャネル

採用活動における母集団形成は、採用成功を左右する重要なプロセスです。
少子化が進む現代においては、限られた人材の中から最適な候補者を見つけ出すことが一層困難かつ重要になっています。本記事では、採用担当者が直面するこの重要な課題に対して、どのようにして効果的な母集団を形成するか、そのための「採用チャネル選定」に焦点を当てて解説していきます。
採用チャネルの基本から詳細な解説、実践的なステップまで紹介していますので、ぜひご参考ください。

採用チャネルについて

●採用チャネルとは

「チャネル」とはマーケティング用語であり、ここでのチャネルは情報経路や情報を伝達する手法を指します。
採用チャネルは求職者と企業の出会いの場を指し、企業が人材を採用する際に利用する手段や媒体を意図しています。代表例を挙げると、求人広告や人材紹介が採用チャネルにあたります。

●多様化する採用チャネルとその種類

これまでの採用シーンにおいて、主要な採用チャネルは求人広告と人材紹介くらいでした。しかし、少子高齢化による労働人口の減少によって企業の採用競争が激化。優秀な人材を獲得するために多様な採用チャネルに対応する必要がでてきました。
求人広告を出稿して応募を「待つ」採用だけでなく、企業が自ら動く「攻め」の採用も重要になっています。採用担当者にはどのような採用チャネルがあるのかを把握し、母集団形成に向けた適切な採用チャネル設計が求められています。
以下、採用チャネルの種類と、それぞれのメリット・デメリット、活用ポイントをまとめました。

求人広告》

求人広告は、最も広く普及した採用チャネルです。
求人サイトや求人誌、フリーペーパー、新聞折込チラシなどで自社の求人情報を掲載する方法です。

メリット
幅広いアプローチ:大手求人サイトは数百万人の会員登録を誇り、多くの人材にアプローチできます。
採用コスト削減:1回の求人広告掲載で複数名採用できれば、1名あたりの採用コストを抑えられます。
地域密着型:特定の求人サービスはエリア限定での人材採用に適しており、地域密着型の求人を出稿できます。

デメリット
料金の差異:掲載プランによって料金が異なり、掲載優先順位も変動します。
採用人数に関係なく支払い:採用数0名でも掲載料金を支払う必要があります。
選別に工数がかかる:マッチング度の低い層からの応募も多く、選別に時間がかかります。

活用ポイント
採用ターゲットの含有率が高い媒体選定:求人媒体を選ぶ際に、自社のターゲットとなるアクティブユーザー数を確認して応募増に期待しましょう。

人材紹介》

人材紹介は、転職エージェントや派遣会社から人材を紹介してもらう採用チャネルです。
自社が求める人物像を伝えることで専門的なスキルを持つ人材や管理職など、ハイクラス人材を紹介してもらえる可能性が高まります。

メリット
負担軽減:採用活動を人材紹介サービスに委ねることで、採用担当者の負担を減らせます。
選考通過率向上:自社に合った人材を紹介してもらえるため、選考通過率が高まります。

デメリット
高い採用単価:成功報酬型の料金体系です。採用決定者の年収の数十%前後の手数料がかかり、採用単価が高くなります。
応募偏りのリスク:条件の良い求人に応募が偏る傾向があり、なかなか紹介してもらえない可能性があります。

活用ポイント
コミュニケーション:依頼して終わりではなく、エージェントの担当者に詳細な採用ターゲットを伝えたり、条件面について他社と比較して劣っていないかを相談したりなど密なコミュニケーションを取ることが採用成功に繋がります。

《自社採用メディア》

採用サイトや採用オウンドメディア、採用動画、採用パンフレット等は、企業の魅力を自由にアピールできる採用チャネルです。

メリット
ターゲット向け発信:採用ターゲットに向けた発信を行うため、マッチング度の高い応募が期待できます。
転職潜在層へのアプローチ:採用オウンドメディアを通じて、転職先の候補として認識してもらえるようになります。

デメリット
コスト:ゼロから採用メディアを構築する場合、導入コストがかかります。
周知に時間がかかる:企業の知名度が低い場合などは検索流入が期待できず、認知してもらうためにSNS等を活用するなどの広報活動が必要です。
定期的な更新が必要:オウンドメディア等は質の高いコンテンツを作り続けるなど、長期運用が求められます。

活用ポイント
既存サービスの活用:オウンドメディアを立ち上げる際、ブログなど既存のサービスを利用するとコストを抑えられます。
SNSとの併用:オウンドメディアへの流入数を増やすためには、SNS(X、Instagram、Facebook、YouTubeなど)との併用が効果的です。

《ダイレクトリクルーティング》

ダイレクトリクルーティングは「攻め」の採用チャネルです。
「ヘッドハンティング」の新たな手法として、企業は求人サービスのデータベースから条件に合いそうな求職者を検索して直接スカウトできます。

●メリット
採用単価の抑制:サービスの料金形態にもよりますが、運用次第では採用単価を抑えられます。
転職市場外の優秀な人材にアプローチ:ダイレクトリクルーティングは、転職市場に出ていない人材にもアプローチできます。
ミスマッチの低減:自社が求める条件に合わせた人材にアプローチするため、採用後のミスマッチが起こりにくい傾向にあります。

●デメリット
運用工数の増加:人材選定からスカウトメールの作成まで、企業側で作業を行う必要があります。
返信率の低さ: データベースの登録者数が多くても、一斉スカウトが大量に流通していたり、マッチング精度の低いサービスは返信率が低くなる傾向があります。

活用ポイント
個別対応のスカウト文:スカウト返信率の高いサービスを利用しましょう。また、テンプレートメールではなく、候補者に合わせて内容を書き換えることが、効果的なスカウトにつながります。

《ハローワーク》

ハローワークは国が運営する雇用サービスです。近年では中途採用だけでなく新卒向けの求人も増えています。

●メリット
費用ゼロで運用可能:利用料はかからないため、費用をかけずに求人を掲載できます。
知名度と信頼性:ハローワークへの知名度と信頼性が高いため、幅広い求職者に見てもらいやすいというメリットもあります。

●デメリット
限られた求人情報の掲載:求人情報に掲載できる内容は仕事内容や賃金、福利厚生といった基本的なものに限られます。そのため、他社との差別化や自社独自の魅力を打ち出すことが難しい採用チャネルです。
閲覧数の少ない新卒者:ハロワークを活用する新卒者は他チャネルと比較して少ないため、新卒採用活動のメインチャネルとしては心細いです。

活用ポイント
ターゲット設定:ハローワーク利用者は、年齢が高めの傾向にあります。求職者の年齢層や地域に合わせてうまく活用しましょう。
明確な求人情報:ハローワークの求人情報は基本的な内容に限られています。自社の魅力をアピールする際には、明確で分かりやすい求人情報を作成して、求職者に訴求することが重要です。

《ソーシャルリクルーティング(SNS)》

SNSも採用チャネルのひとつとして活用されています。自社の公式アカウントから企業の魅力を発信して、採用サイトやオウンドメディアへの流入増加が主な目的となります。

●メリット
費用ゼロで広告:SNSのアカウント開設や運用は基本的に無料でできるため、採用コストを抑えられます。
拡散力とリーチ:SNSは強力な拡散力を持っているため転職潜在層にもリーチできます。

●デメリット
継続運用の必要性:SNSで認知されるには定期的な発信が必要となるため採用担当者の負担が増える可能性が高いです。
炎上リスク:運用には細心の注意を払わなければ、炎上するリスクがあります。

活用ポイント
ターゲット設定:SNSによって、年齢層や属性が大きく異なります。そのため自社の採用ターゲットにマッチしたSNSを選ぶことが重要です。
戦略的な情報発信:選定したSNSに合った訴求方法、コンテンツの企画が重要です。また、SNSで発信した情報は流れていってしまうため、情報をストックできるオウンドメディアの併用も検討しましょう。

採用イベント(個社/合同企業説明会、転職フェアなど)》

オフライン/オンラインで開催される様々な採用イベントは、求職者と直接コンタクトが取れることが特徴です。

●メリット
対面コミュニケーション:採用イベントでは求職者と直接的な接点を得られます。対面で話すことで企業の魅力を伝えやすく質疑応答の時間も設けられるため、効果的なアプローチが可能です。
採用候補者を絞り込める:自社が求める人材像に合わせて出展するイベントを選ぶことで、効率的な募集を狙えます。

●デメリット
来場者数の問題:イベントそのものの来場者数が少ないと、費用対効果が悪くなる可能性があります。
労力増大:出展には場所の確保やブースの準備、運営のための人員確保などが必要となるため、それなりの労力がかかります。

活用ポイント
魅力的なブース構築:複数の企業が出展するイベントでは、自社のブースが魅力的に見えるように、求職者が興味を持つような展示やプレゼンテーションが重要です。
効率的なアプローチ:質問や質疑応答の時間を活用して、求職者とのコミュニケーションを重視しましょう。

《リファラル》

リファラル採用は社員に知人を紹介してもらう採用チャネルです。ダイレクトスカウトと同じく「攻め」の採用の一種となります。

●メリット
ミスマッチの防止:自社の企業風土や働き方を熟知した従業員の判断を通じて人材を紹介してもらえるため、ミスマッチが起こりにくくなります。
優秀な人材へのアプローチ:転職市場に出ていない優秀な人材にアプローチできます。

●デメリット
エンゲージメントの影響:従業員のエンゲージメントが高くない場合、紹介してもらえない可能性があります。紹介がなければ採用できないため、早急な人員補充が必要な場合には適していない採用チャネルとなります。

成功のポイント
周知の仕組みづくり:社員が主体的に採用活動に参加してもらえるように、リファラル採用のメリットを伝える仕組みを整えましょう。
紹介者と被紹介者の関係に配慮:紹介しても採用に至らないケースもあるため、紹介者と被紹介者の関係に不和が生じないようなアフターケアが重要です。
選考プロセスの改善:面接前に社内見学やカジュアルな面談を導入することで、ミスマッチの可能性を下げるようにしましょう。


採用チャネルを効果的に活用するために

少子化が進む現代における採用チャネル戦略

少子化や労働人口の減少が進む現代では、適切な候補者を見つけ出すために戦略的に採用チャネルを選ぶ必要があります。限られた人材のなかで母集団形成を成功させるためには、「とりあえず求人広告を出す」のではなく、採用チャネルを選ぶための事前準備が非常に重要なります。

採用チャネル選定のステップ

採用チャネルの選定で必要な3つのステップをご紹介します。

ステップ1.採用目的の明確化とターゲットの設定

母集団形成を成功させるためには、以下のステップを踏んで具体的な目標を設定しましょう。

▼採用目的の定義
エンジニアの増員や営業職の強化など、採用の目的を明確にします。

・どの職種やポジションの人材を採用するのか明確化
・必要なスキルや経験、人物像の具体的な洗い出し

▼ターゲットの特定
例えば、若手エンジニアを狙うのであればソーシャルメディアが有効など、ターゲットを特定することで採用チャネルが選びやすくなります。

・採用対象となる求職者の属性を考慮
・年齢/性別/学歴/経験などを分析し、ターゲットを絞り込む

ステップ2.採用予定数と母集団の目標値設定

▼採用予定数の設定
年間でどの部署のどの職種を何名採用するのか、その数値を明確にします。

・企業の成長戦略や部門ごとのニーズに基づいて、採用予定数を設定
・人材不足を考慮し、現実的な数値を設定

▼母集団の目標値設定
100名の応募者から20名の面接を行い、最終的に10名の内定を出すなど、それぞれの目標値を設定します。

・母集団形成の目標値を設定
・応募者数、面接数、内定数などを具体的に定める

ステップ3.採用スケジュールの計画

▼採用スケジュールの作成
エントリー受付期間、書類選考、面接日程、内定通知などをスケジュールに落とし込みます

・採用活動のタイムラインを設定
・母集団形成から内定までの期間を考慮し、スケジュールを詳細に計画

▼採用チャネルの選定と活用
ここで採用チャネルの選定プロセスに入ります。例えば、エンジニア職の採用には専門的な求人サイトや人材紹介を活用するなど、採用目的と採用ターゲットに合ったチャネルを選定します。

・採用チャネルにかけられる予算とリソースを算出
・各採用チャネルの特性を理解し、最大効果を得られるチャネルを検討
・採用チャネルの決定
・採用チャネルに合わせた情報を発信する

良質な採用ブランドは応募数の増加、内定率の向上、離職率の低下などに影響を与えます。どの採用チャネルでも一貫性のある採用メッセージを伝えることで、採用ブランドの信頼性を高めていきましょう。


採用チャネル選定のプロジェクト紹介

いかがでしょうか。採用チャネルの選定は人材採用において重要なステップです。
採用目的を明確にし、ターゲットを特定し、効率的なスケジュールを立てることで、優秀な人材を獲得するための採用チャネルを設定しやすくなります。
最後に、採用チャネル設定に関連した弊社のプロジェクトをご紹介しますので、ご参考になれば幸いです。


お役立ち資料

当社では、採用担当者向け資料「母集団形成におけるチャネル選定の考え方とポイント」もご用意しております。チャネル選定に必要なステップを詳しくまとめていますので、ダウンロード申請の上、ご活用いただけましたら幸いです。

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安井省人
取締役 クリエイティブディレクター

組織活性につながるクリエイティブとは何か?問題の本質は何か?を追求する毎日。近道でも回り道でもゴールに繋がるプロセスを大切に、現実にも夢にも向き合いたいと思っています。二地域居住の週末田舎暮らしやってます。


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