ニケシュ・アローラ氏の電撃辞任から、創業社長の本音を考えた。
6月21日発表されたこのニュースを見て、「えっ?まじ?」となった方は私だけではなかったことでしょう。
- ソフトバンクがニケシュ・アローラ氏の退任を発表 – 孫正義氏が社長継続へ -
ソフトバンク孫社長の後継者については、2010年に開校した「ソフトバンクアカデミア」における「育成」が目玉でしたが、その後ニケシュ・アローラ氏が「抜擢」されました。孫社長がアローラ氏のことを「後継者の筆頭候補だ」と名言したのはちょうど1年前、2015年のことです。
今回孫社長が60歳を過ぎても社長を続けることを意思決定し、アローラ氏が退任を意思決定した本当の背景が何なのかは、当事者同士にしかわからないことでしょう。よって考察したり学びを得るなら、公になっているコメントからが唯一の手段。そのコメントは、こちらです。
(60歳まで)あと1年になっちゃった。「ちょっと待てよ」と考えてみると「俺は十分枯れたかな」と、まだ欲が出てきまして。“シンギュラリティ”がやってくるというなかで、もうちょっとやり残したことがあるなと。もうちょっと社長を続けていたいなという妙な欲が出てきてしまいまして。それでニケシュに「申し訳ない」と話をして、今日の発表にいたったんです。
思考のプロセスを含めて本音感があり、個人的にとても印象的でした。「謝らなくても済む理由づけ」をしようと思えばできるだろうし、そうしてしまう経営者も多いのでは?と思うからです。
(A)
60歳。まだまだ元気。目の前には、壮大でわくわくするテーマが広がっている。そのテーマに対して「ベストなリーダーシップ」を発揮できるのが自分であることもわかっている。やりたい。やるべき。迷う必要なんてあるんだろうか?
(B)
一方で、30周年のときに「創業者の私の最も重要な役割は、最低300年続くソフトバンクグループのDNAを設計すること」と言っている。自分がここで社長続投を決定すれば、現時点のベスト後継者であるニケシュは離れるだろう。次の後継者候補は、ますますハードルが上がる。予定通り来年引き継ぐことが、長期的なビジョンの実現に対してはベストなのではないか?
勝手な想像をしましたが、(A)or(B)。どうしようか・・・
そんな葛藤が孫社長のなかにあったのではないでしょうか。
「会社とは何のためにあり、だれのものなのか」という議論はずっと前からあります。「社会のためにあり、株主のものである」という答えもあれば、「社員のためにあり、だれのものでもない」という答えもあるでしょう。ただそういった「原理原則的観点」ではなく、創業社長の本音の一つには、
●自分がつくったこの会社は、自分の自己実現のためのツールである。
というものがあるのではないかと思います。そしてその自己実現は「社会を良くすること」や「社員の幸せ」少なからず向いているため、言い方によって利他的な文脈になっていきます。
今回の孫社長の意思決定が正しかったのかどうかは、数年後、数十年後、数百年後?にしかわからないかもしれません。ですので「正誤」を議論するのはナンセンスだと思います。ただ私も含めた創業社長はもちろん、ビジネスに関わる全ての人が「自分だったらどうするんだろう?」と考えてみることは、意味があると思いました。
増渕知行
代表取締役 クライアントパートナー
理想を追求し続けたら、起業に行きつきました。ジャンプは自分の人生そのものです。ジャンプはクライアントにとって、頼れる同志であり続けたい。社員にとって、燃える場所であり続けたい。約束は守る男です。週末は野球がライフワーク。
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