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採用コラム

全社一丸採用の時代がやってきた ~売り手市場で成果を出す新卒採用活動とは?~

辻隆斗

◎学生と会えない時代

なかなか終わりの見えない売り手市場ですが、就活生を集めることに苦労されている企業が年々増えてきているように感じます。具体的には、エントリー数が増えない、説明会の参加者が少ない、選考に進んでくれないなどを主な要因として思うように学生と会えないわけです。加えて選考途中で離脱したり内定辞退も重なって採用活動が長期化してしまうことになります。一方で、就活生の数自体は増えており、これはリクナビ、マイナビともに登録学生数が増加している(※)ことからも推測できます。ではなぜ企業は学生と会えないのでしょうか。要因は3つほど考えられます。まず学生が最初から業界を絞って動くようになったこと、学生のエントリー社数・受検社数が減ったこと、そして学生が最初に内定が出た企業に決め就活をやめてしまう傾向が強まったことです。つまり最近の就活生は「少ししか動かないしすぐいなくなってしまう」わけです。実際に学生さんの声を聞くと、つい数年前までは100社エントリーが当たり前でしたが、最近は2~30社という回答が増えましたし、辞退の理由も先に内定が出た企業に行くことにしたからというものが非常に多く聞かれます。

(※)リクナビ、マイナビの登録学生数推移
リクナビ:2018年65万人→2019年76万人
マイナビ:2018年72万人→2019年80万人

◎「全社一丸採用」の時代がやってきた

一つ言えることは、今までと同じやり方をしていても問題は解決しないということです。ではどうするのがよいのでしょうか。方向性を3つほど挙げてみたいと思います。

1.出会ってから内定を出すまでの期間をできるだけ短縮すること
2.その期間内にできるだけ接点を持つこと
3.各接点で自社の印象を強く残すこと

1つめの期間短縮はすでにそのような傾向が表れていますが、出会ってから学生を長い期間放置しないことは非常に重要です。その間に他社の印象にどんどん上書きされて自社の印象が薄まっていってしまうからです。2つめと3つめはその逆であり、他社の入り込む余地を与えずに志望度を上げていくための工夫と言えます。しかし、これらを採用担当者だけ、人事だけでやりきるのは難しいとでしょう。そこで現場や経営陣にも採用活動に参加してもらう、全社一丸採用をおすすめします。マイナビのデータ(※)にあるように、採用がうまくいっていると回答している企業が実施した施策に、「社員と学生との座談会や懇親会」、「就活生と社員との食事会・飲み会」、「若手社員による自分の仕事内容の解説」、「経営者や役員による講演」などとあります。うまくいっていないと回答している企業にはこれらは見られません。

(※)マイナビ:「採用が「うまくいった」中小企業が実施していること」
https://saponet.mynavi.jp/column/corp/saiyo-tyusho/

◎「全社一丸採用」のすごい副次効果

全社一丸採用は、人事の立場が現場より弱かったり、採用活動に対する理解が得られていなかったりする企業では実現は難しい傾向にありますが、その方策はまた別の機会にご紹介します。ここでは全社一丸採用にはすごい副次効果があるということをぜひ知っておいていただければと思います。3つほどご紹介します。

1.現場社員が新入社員を好意的に受け入れてくれるようになる
2.現場社員が会社の魅力を再認識しエンゲージメントが高まる
3.現場社員に「自分たちでいい会社にしていこう」という当事者意識が芽生える

1つめについてですが、自分が面接や面談で会って話した学生さんにはそれなりに親近感を持ちますし、合否の状況や内定を承諾してくれたのかなど気になったりするものです。そんな学生さんが新入社員として入ってくると、やっぱりうれしいものです。そして、たとえ配属が別の部署になったとしても、交流が続いたりします。新入社員にとっても、配属先の部署以外に知っている先輩社員がいるというのは心強いものです。2つめについてですが、自社の魅力を外部の人に伝えるわけですから、何を話すべきかを整理する必要がありますし、人によっていうことがバラバラでは効果的なコミュニケーションとは言えませんので、他の社員とも認識を合わせておく必要があります。こうしたプロセスを通じて再認識した自社の魅力を外部の人にたくさん話すことでさらに認識が強まり、それに伴って自社に対する愛着もまた強くなります。その延長線上で3つめにつながりますが、「これが言えたらもっといい会社だと思ってもらえるのに」とか、「それってもう少し頑張ったら実現できるのでは?」などと思いはじめる社員が必ず出てきます。そしてその人数が増えてくるといつしかウェイブが起きて社内全体に影響し、社風として定着するようになります。組織としての結束もまた強くなるでしょう。これらは正のスパイラルとなって次の採用にも強力な武器となっていきます。そしてその頃には、全社一丸採用は人事からお願いするものではなく、現場から希望者がたくさん集まるものへと変貌を遂げていることでしょう。

いかがでしたでしょうか。全社一丸採用についてご紹介しましたが、確かに最初は難しいかもしれません。しかし実現できたときのメリットの大きさもまた計り知れませんので、ぜひチャレンジしてみてください。難しそうだと感じられる場合には、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。

辻隆斗
取締役 クライアントパートナー

前職は人事を担当。会社全体の仕組みから社員一人ひとりのケアまで、幅広い視点から会社や組織の活性化に貢献します。既存の概念にとらわれることなく、常に柔軟に考えることを心がけています。趣味は料理。食べるのも作るのも大好き!


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