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オンライン面接で「応募者との相互理解」を深めるポイント

林田宏基

昨今の社会背景を受けて急速に一般化しつつあるオンライン選考。
この記事をご覧になっている企業さまの多くは、すでに面接をはじめとした選考のオンライン化に対応済みか、まさにオンライン化に向けて準備を進めていらっしゃるのではないかと思います。
ところで、これまでの対面型面接をそのままWEBに移行すれば「オンライン化はひとまずOK!」、と思っている企業さまがいらっしゃるとすれば、それは大変危険です。
オンライン面接は、時間や場所といった物理的制約からの解放を可能にする一方で、対面よりも面接官と応募者が相互理解を深めにくいという二次元の壁がどうしても残ります。
そこで今回は、オンライン面接で「応募者との相互理解」を深めるポイントをご紹介いたします。

※本記事の内容は、オンライン上でリアルタイムに対話する形式のWEB面接を想定しています。(録画型の動画面接は本記事の対象外です)

1.自己開示しやすい環境づくり

オンライン面接では、応募者が自分を素直に開示できるような環境づくりが一層重要になります。
初対面である面接官が「得体の知れない存在」ではなく「安心できる存在」として受け入れてもらえるような工夫が必要です。

▶印象を左右するカメラの高さ

画面に映っている面接官が応募者を上から見下しているように見える、或いは逆に面接官が上目遣いに覗き上げているように見える…。
この原因はカメラの位置。まず、カメラの角度が机と水平になるように、そしてカメラの高さは面接官の目の位置と同じにします。カメラの高さは、PCの下に台を設けるか、椅子の高さで調整しましょう。

▶カメラとの適切な距離感

画面に面接官が顔しか見えない、或いは面接官がやけに遠くに居るように見える…。これはカメラと面接官の距離の問題です。面接官は、肩あたりから顔にかけてバランスよく映る位置でポジショニングしましょう。

▶応募者と視線を合わせる

面接官が応募者の口元ばかり見ているような気がする…。
応募者の顔(画面)ばかりを見ていると、必然的にそうなります。面接官は、カメラを見て話しましょう。画面上で視線を合わせても、応募者には視線が合っていないように見えてしまいます。

▶画面の明るさと光を味方に

面接官の顔が薄暗くて、表情も読み取れない…。そのような状況では、応募者も自己開示しにくいのも当然です。
まず、オンライン面接時はPC画面の明るさを最大にしましょう。そして、太陽光や照明が面接官の前方に来る位置に座りましょう。光源を背にすると、面接官の顔は陰になってしまいます。

▶音への気配り

面接官の声以外の音を拾って集中できない…というケースもあります。
まず、静かな個室で面接しましょう。オンライン面接は場所を選ばないからと言って、周りが騒がしいデスクでやるのは論外です。また、オンライン面接中は極力PCを操作しないようにしましょう。タイピングやマウスのクリック音は、思っている以上に応募者に聞こえています。

2.入念な準備と丁寧な運営がカギ

画面越しのコミュニケーションは、対面型面接よりも間が持ちにくいため、結果として表面的な対話や印象評価で切り上げてしまいがちです。オンライン面接では、対面面接よりも入念な準備と丁寧な運営が求められます。

▶インフォームド・コンセントの重要性

面接の概要説明も、面接官の自己紹介もなく、いきなり本題に入っていませんか?
対面面接でも重要なインフォームド・コンセント(説明と同意)、オンライン面接では重要度が何倍にも上がります。自己紹介は面接官から先におこなった上で、対話を通して相互理解を深めたい、応募者の疑問や不安を解消したい、といった思いをぜひ冒頭で伝えてあげてください。

▶いつもより大きめのリアクションを

一所懸命話しているのに、面接官が反応してくれない…。そのような面接では、応募者が「自分の能力をきちんと相手に伝えることができた」「自分の能力がきちんと発揮できた」という感覚が低くなってしまいます。
オンライン面接は、ノンバーバル(非言語)コミュニケーションに難点があるため、「ちゃんと話を聞いていますよ」というサインをオーバーアクション気味に示してあげる位が丁度良いです。応募者の話を聞くときは、いつもより大きく頷き、相槌を打つようにしましょう。また意識的に身振り手振りを大きく、表情の変化(特に笑顔)も大きくしましょう。

▶スムーズな対話を進めるために

「面接官の質問は分かりにくいし、自分の話を深掘りもしてくれなかった…」という印象を与えてしまっては、相互理解は深まりません。
オンライン面接では、掘り下げたい内容をアジェンダ化して、手元に用意しておきましょう。
さらに、質問項目を事前アンケートとして回収しておく工夫もできます。オンライン面接時は、応募者と面接官がお互い事前アンケートを手元に用意するか、画面共有機能を活用することで、スムーズな対話と掘り下げ質問につなげることができます。

▶双方向性のある運営を

意識的に運営しないと双方向性が弱まるオンライン面接では、必ず応募者から質問をする機会を提供しましょう。
たとえば上述の事前アンケートで、予めオンライン面接時に聞きたいことを明示してもらっておけば、納得性の高い回答を用意することもできそうですね。

3.まとめ

いかがでしょうか。対面で実施していたことを単純にオンライン化するだけでは、効果の劣化を避けることはできません。
面接官の皆さん一人ひとりの心掛けと配慮も大切ですが、まず人事としてオンライン面接の設計とガイドラインの整備が重要です。
加えて、オンライン面接官を対象としたガイダンスやリハーサルも実施すべきであると言えるでしょう。

そしてもうひとつ重要なことは、応募者との相互理解を高めるためには、オンライン面接の品質を担保するだけではなく、採用プロセス全体を再設計する必要がある、ということです。

たとえば、従来の対面面接よりもオンライン面接回数を増やすことで、単純接触効果(1回当たりのインパクトは弱くても繰り返し接することで好意度や印象が高まるとされる効果)の向上を図ることが可能です。オンライン面接の回数を増やすことが困難な場合は、合格者を対象としたWEB人事面談の実施や、複数の合格者を集めたWEB現場社員セッションを企画・実施することも有効です。
或いは、合格者だけに公開する限定コンテンツや、人事からのメッセージカード、メッセージムービー、次選考に向けたアドバイス資料等のフォロー手法があります。限定コンテンツの用意が難しい場合は、採用サイトの特定コンテンツのレコメンドや、採用ピッチ資料や採用ムービーのWEB公開を行うだけでも一定の効果が期待できます。

採用活動をオンライン化すること自体は目的になり得ません。これまでやってきたことをWEBに置き換えるだけではなく、採用CX(Candidate Experience 候補者体験)向上のためにタッチポイントを増やす、という発想が必要なのです。WEBの良さを活かしながら、WEBの難点を凌駕するような知恵と工夫がいま人事に期待されているのです。

林田宏基
クライアントパートナー

「何が目的か、何が手段か」に拘ります。顧客以上に顧客好き、はもう治りません。論理派気取りで情緒的、寂しがりやの一人旅、早起き苦手な山登り、真面目な顔してヘヴィメタル、強くもないのにお酒好き。典型的な天邪鬼ですが、実は褒められて伸びるタイプです笑


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