STRUCT REPORT
採用コラム

オンライン採用(面接・説明会)の企画・運営の工夫について

林田宏基
オンライン面接・構造化面接の質問技法

2019年から2020年にかけて、採用を取り巻く環境に大きな激震が走りました。
「コロナショック」といもいうべき、強制的なパラダイムシフト(常識や価値観の劇的な変革)です。
採用マーケットの観点で見ても、これほど短期間のうちに採用の在り方を根底から覆される衝撃は前例がないでしょう。
本記事では、コロナ禍での採用事情やオンライン採用の特徴(メリット・デメリット/具体的な運営手法など)について、記しています。
また、オンライン面接・オンラインイベント実施における工夫や実施イメージをより詳細に記載した『オンライン採用マニュアル「オンライン採用の準備と運営」』をご用意しております。
ダウンロード申請の上、オンラインでの採用活動にお役立ていただけましたら幸いです。

1.コロナ禍での採用事情

今、企業は「対面を前提とした従来型の採用活動の継続が困難である」という状況に直面しています。
そして、大手企業を中心に、手探りながらも着々と採用活動のオンライン化が進行してきたのが2021新卒採用でした。
同時に、オンライン採用の成功体験・失敗体験の積み重ねによりノウハウを獲得できた企業は、2022新卒採用~2023新卒採用にかけてオンライン採用の練度と品質を確実に向上させてきています。

一方、オンライン採用に乗り遅れた企業は、元々が人気業界・人気企業であればまだしも、そうでない場合、何から始めればよいのか、どのように対処したらよいのかが分からずに手をこまねいている間に、オンライン採用の先行企業との採用力の差がますます顕著になりつつあります。

新卒採用に関する企業調査(DISCO 2021年10月)を見ると、2023年卒者の採用見込みについて、「2022新卒並み」と回答した企業は64.7%、「増える見込み」は13.5%に対して、「減る見込み」はわずか5.0%に留まっています。コロナ禍による業績への影響が懸念されても、企業の採用意欲は低下していないことが分かります。2008年のリーマンショック直後、多くの企業が採用数を急速に絞り込む、あるいは一気に採用を凍結したときとは大きく異なる傾向です。
これは、採用活動の継続こそが持続的な成長の生命線である、と多くの企業が教訓を得た結果だと思われます。
この状況下にあっても、企業の採用意欲は高い=売り手市場が今後も続くという前提に立てば、採用成果を上げるために、オンライン採用の導入検討は不可欠であるといえます。

2.オンライン採用のメリットとデメリット~企業と学生の本音~

新卒採用に関する企業調査(DISCO 2021年10月)によると、2022新卒採用において、WEBセミナーを「実施している」企業は86.5%となり、前年度調査(68.6%)を大きく上回っています。オンライン面接の実施率は、前年調査(73.4%)からさらに増加し、81.0%に達しています。

企業はオンライン採用のメリット・デメリットをどのように捉えているのでしょうか。
当社による企業ヒアリングでは、オンライン採用のメリットとして、「一度に多くの学生に情報を提供できた」「遠隔地や海外など広範囲からの応募が増えた」など、学生との新たな接点が創出できたという声に加えて、「採用業務の負担が軽減できた」「協力社員の手配が容易になった」など、採用業務を従来よりも進めやすくなったという声が多く聞かれました。

一方、企業がオンライン採用で感じたデメリットとしては、「採用にかける熱意や思いが伝えづらかった」「会社の雰囲気を感じ取ってもらうことが難しかった」など、動機形成に関する課題感や、「学生の魅力の発見や見極めが難しかった」という、選考評価に関するネガティブな意見が挙げられています。

オンライン採用の導入に伴うメリット・デメリットは、企業ごとに様々ですが、一度オンライン採用を導入した企業は、その後もオンライン採用を継続するケースが圧倒的に多いのも現状です。
そのため、採用成果の創出を目指す企業にとって、採用のオンライン化は、避けて通ることのできない命題といえるでしょう。

次に、オンライン採用について、学生が感じるメリット・デメリットはどのようなものでしょうか。
「オンライン就活」意識調査(エン・ジャパン 2021年5月)では、オンライン採用について「メリットを感じる」が53%、「どちらかというとメリットを感じる」が39%と回答しています。前年度に実施されている22卒学生向けの同調査と比べると、22ポイント増加しています。
当社による学生ヒアリングでは、オンライン採用のメリットとして、「遠方の企業でも選考に参加しやすくなった」「以前よりも気軽に参加できた」など、企業と同様に、新たな接点を持つきっかけを得られたという声や、「交通費や食費がかからず経済的に助かった」「学業やアルバイトと両立しやすくなった」など、実利的なメリットを上げる声も多く聞かれました。

一方、学生がオンライン採用で感じたデメリットとしては、「対面よりもコミュニケーションが取りづらかった」「職場や人の雰囲気をつかみにくかった」など、企業が感じていた「伝えにくさ」の影響が如実にでた意見や、「通信環境の確保に苦労した」「選考時にプライベートの空間が映ることに抵抗があった」など、環境面への声も挙げられています。

学生視点でも、オンライン採用についてはメリット・デメリットの双方がありつつも、メリットを多く感じる学生が大半であることがわかります。また、オンライン授業を実施している大学も多くなり、学生も企業と同様にオンラインへの親和性が今後も高くなると考えられます。
そのため、企業はオンライン採用のメリットをいかに最大化し、かつデメリットを最小化できるか、が問われることになるでしょう。

3.オンライン採用の特徴と留意点

従来型のオフライン採用は、基本的にはほぼオンライン化が可能です。
事実、応募受付から最終面接までの採用プロセスを、すべてオンライン化している企業もあります。では、オンライン採用とオフライン採用は何が違うのか。
ここでは、大きく3点をご紹介します。

(1) 通信の不具合など、環境面の限界
(2) 職場見学や実務体験など、リアリティの限界
(3) 面談や面接をフックとした、志望度逆転の限界

これらの限界を突破するためには、事前の対策に加えて、オフラインも含めて複合的に施策を検討する必要性や、採用活動のストーリーを描くことが重要となります。
(1)~(3)に関する詳しい解説とオンライン採用の実施手法については、こちらよりご確認いただけます。

4.オンラインイベントの企画~プログラムと運営の工夫~

採用活動で実施されるイベントは、「インターンシップ」「会社説明会」が代表的です。
一般的には、インターンシップは体験型プログラム、会社説明会は講演型プログラムとされていますが、インターンシップが主戦場となっている昨今の採用市場において、オフラインで実施していた講演型の会社説明会をそのままオンライン化しても、効果はあまり期待できません。イベントのオンライン化にあたっては、まずは実施目的を再考してみてください。

ポイントは、学生の「理解促進」ではなく、「共感醸成」に目的を設定することです。学生の「理解度」は、必ずしも「志望度」とは比例しないと認識しておく必要があります。
学生の共感を醸成するプログラムの企画と運営の工夫について、それぞれ3つの視点をご紹介します。

▼プログラムの企画
(1) ストーリーにこだわる
(2) 双方向性にこだわる
(3) 社内の巻き込みにこだわる

▼運営の工夫
(1)イベントの最後まで学生を離脱させない工夫
(2)オンラインに適した学生に伝わる資料
(3)イベントのマンネリ化を防ぐために

各(1)~(3)に関する詳しい解説と具体的な手法、オンラインイベントの実施形式については、こちらよりご確認いただけます。
他社との差別化や学生の満足度向上につながるヒントにお役立ていただければ幸いです。

5.オンライン面接のポイント

オンライン面接は「見極めがしにくい」という声がよく聞かれます。しかし、LIVE型のオンライン面接は、実は通常のオフライン面接と大きく変わるものではありません。
確かに、3次元で捉えていた雰囲気や立ち居振る舞いなどのノンバーバル(非言語的)な要素は、オンラインでは把握しにくい部分があります。ですが、そこには、ノンバーバルな要素に面接評価を頼っていたという背景があります。
ここで改めて、面接の目的を「評価」ではなく「相互理解」と位置づけてみると、見方が大きく変わります。以下、応募者に対する理解を深めるために必要なポイントを3つご紹介します。

(1) 面接体系を構築する
面接のオンライン化によって、面接官から「見極めがしにくくなった」という声が上がる企業は、得てしてオフライン面接でも適切な見極めができていないケースが少なくありません。
適切な見極めができていない理由は、面接官が「評価のものさし」を持っていないことにあります。「評価のものさし」がないと、応募者からどのような情報を収集すべきか、面接官はわかりません。結果、所作や印象などに頼るしかなくなるのです。
オンライン面接で「見極めがしにくい」と感じるのは当然です。一方で、応募者に関する事実情報を確認する(見極める)ためには、ノンバーバル(非言語的)な要素に左右されにくいオンライン面接の方が向いている、という研究結果もあります。

重要なことは、面接の構造化です。具体的には、人事が「会社」としての評価基準(ものさし)を明文化し、その価値基準に沿った面接手順を設計し、面接記録を残すツール(面接シートや採用システムへの入力項目)を整備することにより、実現できます。

(2) 質問力を鍛える
構造化した面接に従って応募者理解を深めるためには、言語情報を収集する「質問力」を鍛えることが不可欠です。
具体的には、学生のこれまでのエピソードを掘り下げることで、応募者の思考特性や行動特性を把握できます。この「ファクト」こそ、評価基準に照らし合わせる有益な情報になります。ただし、このような「行動面接」は、面接官の技量に左右されやすい側面もあります。
そこで、当社が開発した質問技法が「WHATS」です。学生のエピソードをファクトベースで掘り下げる、特にオンライン面接で威力を発揮する質問技法です。

(3) 応募者が安心できる場をつくる
緊張感の伴う面接の場であっても等身大の自己開示を促し、相互理解を深めるためには、応募者が安心できる場作りが重要です。
まずは、面接官がオンライン面接に慣れるよう、事前に本番さながらのロールプレイを実施するなど、人事は面接官が自然体でオンライン面接に臨めるサポートをしましょう。
また、実際のオンライン面接では、オフライン面接以上に、意識して「雑談」を採り入れ、場を潤すことも重要です。オンライン面接の冒頭では、面接中に通信トラブルが発生した場合の対処についても説明しておくと、応募者も安心して面接に臨めます。

では、「相互理解の」次のステップとして、応募者の企業理解を促進するための3つのポイントをご紹介します。

(1) 面接官の役割を定義する ~良い面接官の条件とは~
(2) 逆質問を採り入れる ~オンライン面接でも志望度の逆転は可能~
(3) 動機付けの準備をする ~面接官のパフォーマンスを向上させるには~

(1)~(3)の詳しい解説と具体的な手法、図解によるオンライン面接の実施イメージについては、ちらよりご確認いただけます。オンライン面接の運営にお役立ていただければ幸いです。

6.採用戦略の必要性

ここまで、オンライン採用のポイントについてご紹介しましたが、強制的なパラダイムシフトで大きな変化が求められているのは、実は採用だけでなく、経営や事業そのものでもあります。

採用とは本来、経営や事業のビジョンを実現するための手段であるはずです。つまり、経営戦略や事業戦略と採用戦略は密接不可分な関係にあります。
多くの企業にとって、経営戦略や事業戦略の見直しが迫られている今こそ、採用戦略も見直すタイミングであるといえます。

オンライン採用は、今後の採用を構想するうえで大変重要なテーマですが、これは「戦略」ではなく「戦術」です。どのような戦術も、本質的な戦略が確立されていてこそ、一貫性と連動性が担保され効力を発揮します。
採用戦略は、「採用ビジョン」「採用コンセプト」「採用ストーリー」によって構成されます。
「採用ビジョン」「採用コンセプト」「採用ストーリー」の基本構造、具体的な考え方については、こちらよりご確認いただけます。

採用のオンライン化を進めるにあたり、自社が採用を行う目的や目標、自社の独自価値、そして応募者とともにどのようなストーリーを描いていきたいか、を改めて考え、採用戦略の立案にお役立ていただければ幸いです。

オンライン採用マニュアル「オンライン採用の準備と運営」

林田宏基
クライアントパートナー

「何が目的か、何が手段か」に拘ります。顧客以上に顧客好き、はもう治りません。論理派気取りで情緒的、寂しがりやの一人旅、早起き苦手な山登り、真面目な顔してヘヴィメタル、強くもないのにお酒好き。典型的な天邪鬼ですが、実は褒められて伸びるタイプです笑


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