STRUCT REPORT
採用コラム

「集める採用」はもうやめよう。

林田宏基

大量に応募者を集めて、大量に落として、大量に採用して、大量に辞めていく…。
こんな構造があたかも採用の王道のようになったのはいつからでしょうか。

ダイレクト・リクルーティング、リファラル、アルムナイ、といった近年の潮流とともに、
採用の在り方も徐々に見直されつつありますが、いまだ多くの人材系・採用系サービスやHR Techが「大量に集める」という前提に囚われているようにも見えます。

そろそろ、「集める」という呪縛から解放されたくありませんか?

「集める採用」の弊害

企業と求職者、双方にとって多大な費用と時間が浪費される。「集める採用」の弊害はこれに尽きるでしょう。
企業は、ほとんど採用成果につながらないだろうと思いながらも、なかなか「集めるサービス」への投資を止めることができません。
集めた後には、毎日大量の応募書類をさばき、毎週のように説明会をおこない、現場からの愚痴や不満を浴びながら面接を組み、内定を出しても簡単に辞退されて、やっと入社してくれたと思ったら早期離職で人間不信に陥る。
求職者に目を転じてみると、応募者を「集めたい」企業から発信される美味しい情報に乗せられ、本来その企業のターゲットではない人材が、なけなしの軍資金から就職活動費を捻出し、貴重な自分の時間を応募書類の作成や採用選考のために割き、機械的で事務的な選抜の結果あっさり「お祈り」されて、その企業のアンチが大量に生産されていく。
きっとこのようなことが繰り返されてきたのです。

「集める採用」に代わるもの

それは、対極にある「集めない採用」だと私は思っています。
先日、某クライアント企業さまと採用成果についてレビューしていたときのこと。
「内定者は全員、入社を承諾してくれました。全員が、応募段階で第一志望だったんです。」採用数が多くはない企業さまではありましたが、このような採用も可能だということなんですね。
ここで解消しておきたい誤解は、「知ってもらう」と「集める」はまったく別の話であるということです。
「集めない採用」を志向しても、「知ってもらう」努力は不可欠です。
たとえば採用サイトのオウンドメディア化も、SNSを活用した採用マーケティングも、大いに試してみるべき施策だと思います。
でも、「知ってもらう」の先に「集める」という下心を持たないこと、言い方を変えれば、自社のことを知ってくれた求職者の全員が応募してくれなくても結構、という姿勢でいることが重要です。
はて、それはどういう意味なのでしょうか。

「集めない採用」の条件

それはつまり、求職者の「セルフマッチング」と「セルフスクリーニング」のタイミングをできるだけ応募前後の初期段階に設定する、ということです。
もちろん、自社が事業を通して実現したいミッションやビジョン、求職者に約束できるメリットやベネフィットを分かりやすく伝え、共感を醸成することも大事です。
が、同時に自社の抱える課題や困難、求職者にとってのデメリットやリスクについても正直に伝え、納得を形成することも重要なのです。
別の某クライアント企業さまですが、「求める人材像」だけでなく、「求めない人材像」を採用サイトで公表していました。一見、刺激性の強いコミュニケーションだと思われるかもしれませんが、むしろ求職者に対する本当の意味での優しさである、とも言えるのではないでしょうか。

集める採用2
「集める採用」から「集めない採用」へ…。
このように採用シフトした場合、応募者数を経年比較するとほぼ確実に減少します。
それを「積極的に採用失敗リスクを冒す失策」、と一笑に付すことは簡単です。
しかし一方で、集めたくても集まらない時代はもう来ています。そもそも例年通りの応募者数を確保すること自体が極めて困難な環境になってきているのです。

もはや大量生産・大量消費に代表される「量」の時代ではありません。少子化・高齢化も着々と進行する中、日本はクオリティ国家を目指すべきであるとも言われています。
であるならば、私たちは意志を持って、クオリティ企業、クオリティ人事、クオリティ採用を目指したいものです。
本当の意味での「質」を重視した採用とはどのようなものなのか。一度立ち止まって考えるべきテーマなのではないでしょうか。

林田宏基
クライアントパートナー

「何が目的か、何が手段か」に拘ります。顧客以上に顧客好き、はもう治りません。論理派気取りで情緒的、寂しがりやの一人旅、早起き苦手な山登り、真面目な顔してヘヴィメタル、強くもないのにお酒好き。典型的な天邪鬼ですが、実は褒められて伸びるタイプです笑


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