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採用コラム

【イベントレポート】名和 高司 氏(一橋大学ビジネススクール 国際企業戦略専攻 客員教授)パーパス経営の実現に向けて、人事部門が担うべきことは?

名和高司氏 パーパス経営

ジャンプ株式会社は、昨年につづき、24新卒採用に向けたインターンシップ募集が本格スタートする2022年6月1日に、有識者を集めたオンラインイベント『経営×採用STRUCTサミット』を開催いたしました。
経営のための採用、経営に貢献する採用人事というものを、改めて見つめ直す1日にしていただくことで、人事のみなさまにとって、活力や新たなナレッジ習得につなげていただきたい、という思いで開催しているイベントです。

本記事では、一橋大学ビジネススクール 国際企業戦略専攻 客員教授・名和高司氏によるプログラム『パーパス経営の実現に向けて、人事部門が担うべきことは?』について、講演の様子を一部ご紹介いたします。

昨年、名和先生の著書である「パーパス経営」は、非常に話題を呼び、「パーパス」という言葉、概念自体もビジネス界のビックワードになりました。その名和先生の講演を、ぜひ人事のみなさまに聴いていただきたいという思いでお声がけをさせていただきました。

尚、イベント当日の動画もご用意しております。詳しいデータ・スライドがご覧いただけますので、申請の上、ご活用ください。

東京大学法学部卒業後、米ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得。三菱商事を経て、91年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。2010年から現職。ファーストリテイリング、味の素、 NECキャピタルソリューションズ、SOMPOホールディングスの社外取締役を現任。近著に『経営変革大全』(日本経済新聞出版)、『パーパス経営』(東洋経済新報社)など。

登壇者:名和 高司 氏
一橋大学ビジネススクール 国際企業戦略専攻 客員教授

名和氏: 今日は、特に人事のみなさまにとって『パーパス経営』とはどう言うことか、を中心に、主に3つのお話をしたいと思っております。

1.なぜ、今パーパス経営か(Why)
2.パーパス経営の実例(What)
3.パーパス経営の実践(How)

一番大事なことは、どのように実践するかであり、ここに人事のみなさまにご活躍いただきたいところが多くありますので、その点について、お話をいたします。

なぜ今パーパス経営か

かつて(20世紀)は、「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」という言葉が、ある種のお作法として使われていました。
それが、21世紀には、「パーパス・ドリーム・ビリーフ(PDB)」という言葉に変わってきました。これは、単なる言葉の遊びではなく、本質的に変わっているのです。

外側から与えられたものが「ミッション・ビジョン・バリュー」、「パーパス・ドリーム・ビリーフ」は、自分の内側からでてくるもの、という大きな違いがあります。

経営者に聞くと、(ミッション・ビジョン・バリューは)我々が考えたんだと言いますが、社員の方々にとっては「外から与えられたもの」と思ってしまいます。
「ミッション」は、神から与えられた任務を意味しています。ミッションインポッシブルでもご存知の通り、「ミッション」は、上司から与えられたとんでもない仕事ですよね。なので、「ミッション」という言葉は、外から与えられたものとして受け取られてしまいます。

価値観、理念を意味する「バリュー」は、例えばホームページに書いてあったり、壁に貼っていたり、手帳でみんな持っていたりします。そのくらいしないと、なかなか浸透しないですよね。

それに対して図の右側、「PDB」は、一人一人の内側から出てくるものです。
例えば、ミッションが「~すべき」という義務感先行なのに対して、パーパスには、「~したい」という思いがこもっています。

私は「パーパス」を「志」と使っていますが、志とは「士の心」です。「士」は、武士・栄養士など、いわゆる「プロ」ですよね。私は「プロ」を「求道者」と訳してまして、道を究めたい人の心、つまり、自分自身の内発的なものです。

「ドリーム」は、色つきでリアリティ満載で、しかも自分が登場するというものです。
かっこいいビジョンとはちょっと違って、リアリティがあるものです。
さいごの「ビリーフ」、これが、もっと大事です。人事のみなさんがよくおわかりのように、「価値観」は壁に貼ってあったり、手帳で持っていても意味はなくて、自分の胸の中に刻む必要があります。
なので、「信念」でよく言われる、ジョンソン・エンド・ジョンソンさんの「Our Credo・我が信条」のように、自分の胸に刻むことが大切です。つまり、「MVV」と「PDB」では、実は全く方向感が違うのです。

●新SDGsの提唱

私は、「新SDGs」というのも提唱しているのですが、SDGsを超えて、2050年、今から30年ぐらい先を考えましょう、という提案です。

その頃のSDGsは、おそらく様相がだいぶ違います。
サスティナビリティの「S」は現行の17項目よりも、もっと重要な「自分が本当に何をしたいか」という「志」を示した18枚目のカードが必要になってくるでしょう。
「自分らしく伸び伸びと」「新しい世界、価値を世の中に提供したい」という自らの想いがこもっていることが大切だと考えています。

「D」はデジタルと呼んでいます。サスティナビリティ自体に本気で取り組むとコストや投資がかかりますよね。そこで、デジタルツールを使い倒して、生産性や創造性を一桁上げるくらいのパフォーマンスを出すために、どうトランスフォーメーション(X)するか。そのトランスフォーメーションの対象となるのは、自分の業務や事業、経営です。一人一人が自分事としてデジタルを使いこなして、自分たちの想いをこめて世の中を変革していくために、デジタルを使いましょう、という提唱です。

「G」はグローバルですが、「s」をつけています。これは、コロナや世界情勢による分断をもう一度つなぎ止め直すという意味で、「グローバルズ」と呼んでいます。

そして、真ん中で3つをピン止めしているのが、「志」です。「志」を中心に「S・D・Gs」の3つがまわっている、とイメージしていただければと思います。

●資本主義(キャピタリズム)から志本主義(パーパシズム)へ

各企業は3つの市場に向き合っていると思います。まず、当然ながら「顧客市場」ですね。次に、人事のみなさんがまさに中心となっている「人財市場」。人をどう獲得し、どう育て、どう活躍していただくか、これはとても大切な市場です。私も、最も重要だと思っています。それから、「金融市場」。この3つの市場では、それぞれに「〇〇シフト」が起こっています。

「顧客市場」では、100年人生になり、「何を大事にすべきか」を本気で考え直すことで「ライフシフト」が起きています。

「人財市場」では「ワークシフト」です。リンダ・グラットン先生の著書『ワーク・シフト』はお読みになりましたでしょうか。『ライフ・シフト』が有名ですが、その前の『ワーク・シフト』は、人事のみなさまにとって必読の本だと思います。
人はもう決して一つの企業にしばられない、ということです。だとすると、選ばれないといけないわけです。特にミレニアル世代・Z世代の人たちにとって、サスティナビリティは大事ですが、それ以上に働きがいを求めてやってくるはずですので、その想いにこたえることが最重要になります。

当然ながら「金融市場」では、ESGに向けて「マネーシフト」が起こっています。このような市場変化がある中で、いわゆる「サスティナビリティ」は当たり前です。
サスティナビリティに取り組んでいない会社は、市場で生きていけないと思うのですが、一方で、サスティナビリティに取り組んでいるだけでは、市場から選ばれないのです。

そこで、私は『パーパス経営』を提唱しています。単にサスティナビリティに取り組むだけでなく、その会社の存在資格ではなく、本当の存在価値をしっかりと訴えるためには、改めて「パーパス」が問われている時代だと、認識しております。
ここまでが、Why(なぜ、今パーパス経営か)というお話になります。

●さいごに

本記事でお届けする開催レポートは、以上です。
以降の講演では、「パーパス経営の実例」「パーパス経営の実践」に関するお話が続きます。
伝統をしっかり守りながら、新しい現実に向けてパーパスやドリームを描き直したトヨタ自動車さまの事例や、ヤマハ発動機さまの感動サイクルなど、5社の事例について詳しく解説をしていただきました。
後半は、パーパス実践に向けた経営・収益・組織モデルに関する解説がございますので、ご興味がございましたら講演動画を申請の上、ご活用頂けましたら幸いです。

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