STRUCT REPORT
採用コラム

「効率的に仕事しよう!」が、非効率な仕事を生み出す。

内田直樹

今さらですが、効率化、生産性が叫ばれる時代になりました。けっこう前から「日本は先進国の中でも、生産性がワースト●位だ」なんて言われたりもしていますね。でもよくよく考えると「仕事の生産性」って定義が曖昧だし、人によって解釈もバラバラ。そんな中で「生産性を上げろ!」って言われたところで、みんなが納得できる解決策なんて出てくるものなんでしょうか?仕事中も調べものしているつもりがついダラダラとネットサーフィンしたり、アイデアを考えてるつもりが仕事と全然関係ない妄想を膨らまして戻って来れなくなったりと、効率化とはほど遠い僕ですが、今回、仕事の生産性について自分なりに考えてみました。

「そこまで完成度を上げなくても大丈夫だから」というワナ。

「仕事の効率化=ムダを省くこと」と一般的には捉えがちですが、それはちょっと一面的なような気がします。「最小限の手間で、ボーダーラインを超える仕事をやればいい」という発想が、実は仕事の効率をものすごく下げる可能性があります。

たとえば、僕らのようなクライアントワークが中心の仕事には、かならず「プレゼン(提案)」があります。一緒にプロジェクトを運営するメンバーから、たまにこんなことを言われます。

「プレゼンの段階では7〜8割くらい完成度で、そんなに詰めなくていいよ。あとはお客さんと話し合いながら、完成度を高めていけばいいから。だから準備に時間をかけすぎずにいこうよ」

僕に気を使って言ってくれているのはよく分かります。が、こういう一見「効率的」な仕事のしかたが裏目に出ることが多々あります。たとえば、よくあるのが次のようなパターンです。

効率的にサクッとまとめた7〜8割の完成度の企画をプレゼンする。

お客さん、そこそこ納得。が、そこまで満足せず。口を出したくなる。場合によっては「この会社にぜんぶ任せて大丈夫か?」と不安になる。そうなると、さらにいろいろ口を出したくなる。

もらった色んな意見をもとに、企画を再考。意見をできるかぎり盛り込み、かつ企画全体の整合性がとれるように何とか調整調整の末、再プレゼン。

「前よりはよくなりましたね。でも、まだしっくりこない・・。もっとこうしてほしい」というさらなる意見が出てきてしまう。

再修正。再プレゼン。

さらなる意見が・・・。

と、修正→プレゼン→修正の無限ループに陥り、結果的にものすごい効率の悪いプロジェクトになってしまうことがよくあります。こういう進行になると、こちらが疲弊するのはもちろんのこと、お客さんの満足度もだだ下がり。「クオリティはまあまあになったけど、すごく手間がかかったな〜。もう頼むのはやめようかな」えええ、こんなにがんばったのに・・・。

さいしょから効率ばかりを考えないほうが、結果的に効率的になる。

原因はファーストプレゼンでの「印象」にあります。ファーストプレゼンで出した提案の精度がソコソコどまりだったために、お客さんから「この業者はこちらから色々意見を言わないとダメな業者かもしれない」という「印象」を持たれてしまったため、最後まで提案者側はプロジェクトのイニシアチブを握ることができず、後手後手の対応に振り回されてしまったのです。

では、どうすればよかったか?答えは「ファーストプレゼン時に、120%の完成度を目指し、企画提案するべきだった」ということではないでしょうか。いったん効率は横に置いといてアイデアをいっぱい考え、粘りに粘って精度を上げて、プレゼンに臨む。提案した瞬間、お客さんがびっくり喜ぶ。「すごくいいですね!これでいきましょう!後は基本的にはお任せします」そうすることで、プロジェクトのイニシアチブを握る。修正もあまり入らない。その結果、すんなり納品。提案までは大変だったけれど、納品までの全体工数はソコソコの提案をした時と比べものにならないくらい少なく、効率的なプロジェクトができ上がる。提案者側だけでなく、お客さんも口をはさむ手間が減るから、WIN-WIN。それでお互いに早く家に帰れて、お互いの家族もハッピーになる。つまり、WIN-WIN- WIN-WINの完成だ!

一般的には「クオリティにこだわる=手間がかかる。非効率」と思われがちですが、実際には「クオリティにこだわる=効率的」になることって結構あると思うんです。僕自身ズボラで細かい進行管理は苦手ですが、できるだけ最初のプレゼンで案件のイニシアチブを握るようにがんばることで、何とか複数案件を回すことができています。

気持ちが楽なのが、いちばんの生産性。

それに、仕事にポジティブに取り組めるかどうかで、同じ時間働いたとしても疲労度が大きく変わると思うんです。仕事でいちばんしんどいのは、お客さんに満足してもらえない、価値を感じてもらえない仕事を繰り返すこと。これはキツイ。仕事が嫌いになる。病みます。逆にいい仕事をしてお客さんに喜んでもらいさえすれば、多少の苦労もぜんぜん気にならないものですよね。「お客さんの笑顔を見られれば、疲れなんて吹き飛びます!」というアレです(自分で言ってて恥ずかしいですが)。前向きに仕事に取り組めるから、生産性も上がるんじゃないでしょうか。

120%の完成度をめざしてプレゼンしても、うまくいかず無限修正ループに陥ることも多々ありますが、まあしょうがない。次、次、です。なので、プレゼンギリギリまで僕が企画を出せない場合も多目にみてください。許してください。関係者みなさま。という言い訳の記事でした。

内田直樹
コピーライター/ディレクター

じっくりとヒアリングを繰り返し、課題発見、企画提案から取り組む「対話型モノづくり」を信条としています。クリエイターである前に、信頼できる相談相手でありたい。最近始めた野球では、長打が打てるようになりたいとバッティングセンターに通う日々です。


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