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採用コラム

目標とかべつにないんですけど・・・「さとり世代」の若者の育て方

辻隆斗

◎「さとり世代」とは?

「2015年マイナビ新入社員意識調査」を見ていたら、9割が「出世したい」と回答していました。意外とやる気あるねと思って更に見てみると、30歳時点での理想の年収は400万円台が3割でトップだそうで、私から見るとかなり控えめな印象を持ちました。追い打ちをかけるように、「社会人生活に期待する」、「残業してもよい」、「アフター5に会社の人と過ごしたい」、「仕事を通じて叶えたい夢がある」は年々減少する一方で、「プライベート優先の生活を送りたい」が調査開始以来、初めて5割を超えたそうです。

彼らは「さとり世代」などとも呼ばれ、知恵蔵2015によれば、「車やブランド品に興味がない」、「ほどほどで満足する」、「気の合わない人とは付き合わない」などの特徴が挙げられており、前出の調査結果と一致しています。

お父さんの世代からは厳しい言葉も聞こえてきそうですが、人事労務用語辞典を見ると、「物心ついたときから不景気だったせいか、浪費や高望みをしない、過程よりも結果を重視して合理的に動く、すべてにおいてほどほどの穏やかな暮らしを志向するなど、さとりきったような価値観をもつ若者が多いことから、この世代を『さとり世代』と呼ぶようになりました」とあり、環境適応によるものという見方もできそうです。

では、そんな新入社員の彼らを育てるために、人事や周囲はどのように向き合えばよいのでしょうか。今回はこの問題について考えてみたいと思います。

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◎「さとり世代」を育てる3つのポイント

企業は、事業の目標を設定し、達成しながら成長していきます。実行の主体者は社員ですが、彼ら一人ひとりも成長してくれた方が、企業の成長にもよりつながることは自明のことであり、そのためには一人ひとりが自己成長目標を設定し、達成していくことが求められます。そこで問題の「さとり世代」ですが、彼らに目標を設定させたところで、本心では「目標とかべつにないんですけど・・・」と思っている人が多いと思われます。周囲に調子を合わせる形で設定した目標は、当然ながら達成意欲も大して湧きませんので、未達成に終わることになるわけです。「信頼関係」、「成功体験」、「適切な負荷設定」の3つのキーワードでひもときます。

▼信頼関係

「さとり世代」などとひとくくりにして名付けられてますが、性格も得意なことも価値観も一人ひとり違う別の人間です。一人ひとりときちんと向き合うことで、それらを把握しておくことが非常に重要になります。こういったことを積み重ねることで、「あ、この人は本当に自分のためを思ってくれているんだな」ということが伝わり、信頼関係が芽生えてきます。そうなると、多少厳しい言葉であっても前向きな気持ちで聞いてくれるようになりますし、素直な気持ちで本音を話してくれるようになります。こういった関係がベースとしてできあがっていると、以降の工程がより効果的になるのです。

▼プチ成功体験

できることをほめてあげることで得意である意識を持たせたり、できなかったことができるようになったときにほめてあげたり、一緒になって喜んであげたり、それを活かせる仕事を頻繁に頼んでやらせたり・・・。こうして新入社員は、得意なことをもっと伸ばしたいとか、信頼している人にもっと喜んでもらいたいとか、もっとみんなの役に立ちたいなど、何らかの意欲を覚えるようになります。これが軌道に乗れば、新しいことをどんどん吸収していくようになります。また多少不得手なことでも「これもできるかもしれない」とか「できるようになりたい」と考えるようになり、実際にものにしてしまうようになります。つまり、プチ成功体験が次の成功体験を生み、その繰り返しが勢いを生んで、成長に加速がつくのです。ここまで来ると、当初「目標とかないんですけど」と言っていた人も何らかの目標を自発的に持つようになります。

▼適度な負荷設定

筋力トレーニングをするときには、バーベルなどで筋肉に負荷をかけて鍛えます。軽すぎるバーベルでは効果的に鍛えられませんし、重すぎるバーベルではつぶれてしまいます。ギリギリつぶれないくらいの負荷を常にかけ続けるのが、もっとも効果的と言えます。人間の成長も同じです。この新入社員のギリギリつぶれない負荷はどれくらいなのか、常に一人ひとりの力量を把握しておく必要があります。こうして最初のうちはプチ成功体験だったものが、いつしか大きな成功体験へとつながっていくのです。

辻隆斗
取締役 クライアントパートナー

前職は人事を担当。会社全体の仕組みから社員一人ひとりのケアまで、幅広い視点から会社や組織の活性化に貢献します。既存の概念にとらわれることなく、常に柔軟に考えることを心がけています。趣味は料理。食べるのも作るのも大好き!


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