STRUCT REPORT
ブランディング

それでも人工知能は、クリエイティブ業務を奪わないと思う話。

田邊宏明

やれ囲碁で人工知能が世界王者に勝っただの、将棋の羽生さんがついに人工知能と対決するなど、最近ネットニュースでこのたぐいの話をよくみかけます。オセロでいえば、ひと昔まえはいかに人間に勝てるかという勝負だったのに、いまでは人間がいかに人工知能に対抗できるかと、すっかり立場が逆転しているような気がします。仕事の面でも、多くの職種は人工知能に取って代わられるんじゃないかという話もでていますが、クリエイティブの現場でも、人工知能が活躍しはじめています。

小説も、音楽も、絵も、ドラマも、広告も、人工知能産。

ショートショートの小説コンテスト「星新一賞」に、AIが書いたことを隠して応募した結果、一次審査を突破しました。アメリカでは、人工知能による自動作曲サービスが既に始まっています。オランダの画家・レンブラントを学習したAIが “レンブラント風”の絵を見事に描きあげました。AIというよりビッグデータ活用ですが、どのような「作品」「俳優」「ジャンル」の組み合わせが人気を博すのかを解析して導かれたドラマ「ハウス・オブ・カード」は、見事に多くの人の心を捉え、エミー賞を受賞しました。世界125カ国にオフィスがある広告会社「マッキャンエリクソン」は、人工知能をクリエイティブ・ディレクター(広告の品質やプロジェクトを管理するエライ人)として採用しています。

クリエイティブの定義が変わるんじゃないかなと。

わたしはコピーライティングを生業にはしていますが、人工知能が小説を書くぐらいなので、キャッチコピーなんて楽勝でつくってしまうでしょう。しかもビッグデータを解析して購買意欲をそそる、感情をゆさぶる、最適化されたアウトプットになるんだと思います。デザインでいえば、ロゴなんかも著作権に絶対にひっかからないものをつくるのも簡単だと思います。将来、今あるクリエイティブ業の多くは人工知能にとって代わられるかもしれません。それでも、クリエイティブという仕事はなくならないと思ってます。定義が変わるんじゃないかと。人工知能ができない仕事を、クリエイティブな仕事と呼ばれるようになったら。しかもそれは経営とか難しい業務だけではなく、たとえば掃除ロボットが対応できない掃除だったり。創造的な掃除。なんかいいですねぇ。現状クリエイティブという認識が薄い仕事や職業、業務が人工知能の発達によって注目される日が来たら、おもしろいなぁなんて思ってます。そしてそれは、とても素晴らしいことなんじゃないかと。みなさんは、どう思います?

田邊宏明
コピーライター/ディレクター

広告は、目立ってナンボの世界でもあります。ただ、たとえ派手さはなくても、相手のことを思いやる人間らしい誠実なスタンスこそが、人を動かすということを忘れないでいようと思います。腹の肉を追いやるため、なにか運動をはじめようかと思案中。


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