STRUCT REPORT
採用コラム

「イミ社会」がやってきた。人事は、どうする?

林田宏基

時代は、大量生産・大量消費を前提にした「モノ社会」から、体験やつながりを重視する「コト社会」へ…。
近年、このような指摘に触れる機会がとみに多くなりました。
さらにここ最近では、行動や活動の意味や意義を重視する「イミ社会」に移行しつつある、と言われています。
このような時代において、人事・採用に携わる私たちにはどのような変化が求められているのでしょうか?
少し考察してみたいと思います。

イミ社会の到来

いつからか「モノが売れない」とあちらこちらで叫ばれるようになりました。
それもそのはず、日常生活の中でこれほど「モノ」に不自由しない「イマ」という時代は、人類史上例を見ないのですから。
明らかに、人のニーズは「モノの豊かさ」から「ココロの充足」に変わったのです。
そして、「ココロの充足」の対象として支持されたのが、体験やつながりといった「コト」でした。
だから、チームラボが生み出すアート空間やVR/ARアトラクションに人は酔いしれたり、コンセプトが明快なバルミューダやダイソンなどは単機能ながら高額でも大ヒットしたり、SNSでは「イイね!」を求めるタピオカ画像や不適切動画が次々にアップされるのでしょう。
そしていま、人のニーズはもう一段進み、そこに「イミ」を求めるようになってきました。
だからいま、イートグッドのお店やふるさと納税、クラウドファンディングなどに人はお金を投下するのです。
これは、「イミ」に対する共感が行動の動機になる一方で、「イミ」に共感してもらえなかったり、そもそも「イミ」を伝えることができなければターゲットは行動に移してくれない、という傾向であるとも言うことができます。

働く動機の変化

こうした「コト」や「イミ」に対する関心の高さは、「働く動機」にも大きな影響を与えてきています。
かつては「何をやるか」「どこに就職するか」が労働者や求職者によって最重視されていました。
それが次第に、共に働く同志に注目する「誰とやるか」が重視されるようになり、さらにいま「何のためにやるか」にシフトしてきているように思われます。
時代の変化とともに、会社が人を選ぶ時代は終焉を迎えつつあります。これからは、人が会社を選ぶ時代へと確実に移行します。
ここで言う「人」とは、求職者か従業員か、正規雇用か非正規雇用か、社員かフリーランスか、といったラベルの違いを超越します。
ここで訴えたいのは、これから先、人が仕事や会社を選択する際に重視する要素は、仕事内容でも会社の格でもなく、「どんな同志と、どんなイミがあることに取り組めるのか」になっていく、ということです。
そうした中で、企業の求心力の源泉となるのは「ミッション」と「ビジョン」である、と私は考えています。
貴社は、どのような使命感をもって、何のために存在していて、どのような価値や世界観を提供しようと思っているのでしょうか。そのために、どのような集団でありたいと思っているのでしょうか。

いま、人事に求められること

企業の求心力の源泉となるのは「ミッション」と「ビジョン」である、と述べました。
しかし、どれだけ立派なミッションやビジョンも、言い換えればせっかく価値ある「コト」や「イミ」も、発信なくしてターゲットに届けることはできません。
もっと言えば、分かり易い表現と工夫でコミュニケーションしなければ、ターゲットの共感を呼ぶことはできません。
いま、人事に求められること。そのひとつは、自社のミッションとビジョンに基づき、人事としてのミッションとビジョンを確立して、社内外、つまりターゲットたる求職者や従業員に対して、自社の同志になること、同志でいる「コト」の「イミ」を、分かり易く啓発し続けることではないでしょうか。
それが、組織づくりのコンセプトになり、人づくりのコンセプトになり、採用コンセプトになっていくのだと思います。
そしてその愚直な継続こそが、インナーブランディングとアウターブランディングにつながっていくのです。
ローマは一日にして成らず。コンセプトも、ブランドもまた、一日にして成らずなのです。

イミ社会2「日本型雇用崩壊」「LIFE SHIFT」「複業(副業)」といったキーワードとともに、これまでの組織論は通用しなくなると指摘されています。
もはやこの潮流は誰にも止めることはできないでしょう。
しかし、組織の在り方が変化するからこそ、企業はこれまで以上に、「コト」や「イミ」による求心力の強化に注力すべきだと思うのです。
短期視点のKPIによる定量的かつ成果主義的なマネジメントから、長期視点でココロに響く共感的なマネジメントへ…。
いま一番変わらなければいけないのは、経営者と人事なのかもしれません。

さて、コラムも書けたし、梅雨も明けたし、そろそろアルプスに行くとするか。
なぜかって?
そこに山があるからさ。

林田宏基
クライアントパートナー

「何が目的か、何が手段か」に拘ります。顧客以上に顧客好き、はもう治りません。論理派気取りで情緒的、寂しがりやの一人旅、早起き苦手な山登り、真面目な顔してヘヴィメタル、強くもないのにお酒好き。典型的な天邪鬼ですが、実は褒められて伸びるタイプです笑


Contact Us

ふわっとした悩みから、明確な課題まで。採用力に関することは、何でもお気軽にご相談ください。