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ブランディング

採用メッセージは、なぜ美辞麗句になってしまうのか?

内田直樹

家電メーカーのシャープのツイッター、ご存知でしょうか?2011年ごろから始めているようで、すでにツイート数は13万を超え、フォロワーも50万に迫ろうとしています(2019年2月現在)。ソニーのTwitterのフォロワーが7万強、パナソニックが約44万と比較しても、とても多い印象です。

その人気の理由のひとつは「自由すぎる」こと。例えば、SMAPの解散ニュースが報じられた日のツイートがこちら。

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あのナショナルメーカーであるシャープがこんなコメントするか、普通?という内容になっております。

ときどき就職活動についても言及しており、就活生へエールを送ったツイートがこちら。

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このアカウントならではのエールの形という感じです。個人的には、プロフィール欄の誕生日をきちんと「1912年」と記載しているところもジワジワ来ます。

で、その中でも人材採用支援を仕事にしている自分にとって、印象深かったのがこのツイート。

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ドキッとしました。僕自身、これまで採用関連のコピーをたくさん書いてきました。どの仕事もできるだけリアルに、できるだけ応募者の心に刺さるように、常套句にならないように書いてきたつもりです。学生だった頃の自分にバカにされるような、きれいごととか、大人の事情は書いてたまるかと。

でも、すべての仕事が本当に「美辞麗句」じゃなかったか?と言われると、自信を持ってYESとは言えない。というか、どっちかと言えばNOの方が近い。というのが正直な気持ちです。いやー情けない。

とは言え、こういういわゆる「美辞麗句」は、採用活動のいろいろなシーンで散見されます。なぜ、こんな美辞麗句がはびこってしまうのでしょうか。応募者に既読スルーされるなんて、本当はみんな、うすうす気づいているのに。

正解はよく分かりませんが、やっぱり「便利だから」ではないでしょうか。採用活動には多くの人が関わります。人事、経営陣、現場の社員さんたち、さらには内定者も。バックグラウンドが異なる人たちの目線を一つに合わせ、同じ基準で学生と向き合い、面接で判断する道具としては、どうしてもこの「求める人材のキーワード」のように短く簡潔で、聞き慣れた耳障りのいい言葉の方が使いやすい。それにクセのある、尖った表現だと、社内の反発を招くこともある。だから、どうしてもディティールが削られ、どこかで見たことのあるような言葉になってしまうのではないでしょうか。

つまり本来の目的が、「学生へのPRメッセージ」ではなくて、「企業内の意思疎通のための社内文書」なんだと思います。そう考えると合点がいく。しかし、社内文書であっても、社員の採用へのモチベーションを上げ、採用力の強化につなげたいとするなら、その文言もこだわりたいところではあります(「そこをジャンプがお手伝いします」という宣伝です)。

ところで、このシャープのツイート。求める人材のキーワードである「独創性」「人間力」「圧倒的な当事者意識」を、まさに体現していますよね。こういう「本当の言葉」を使える人が採用チームに1人いると、採用活動や広報もイキイキしてきそうです。人事としてはヒヤヒヤするシーンも増えるかもしれませんが。

内田直樹
コピーライター/ディレクター

じっくりとヒアリングを繰り返し、課題発見、企画提案から取り組む「対話型モノづくり」を信条としています。クリエイターである前に、信頼できる相談相手でありたい。最近始めた野球では、長打が打てるようになりたいとバッティングセンターに通う日々です。


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